アニマルセラピー(ペット療法)認知症・精神疾患への驚くべき効果とは

認知症の治療

かわいらしい猫や犬の愛らしいしぐさを見ていると、誰もがつい笑顔になりますよね。

動物園の無邪気な動物たちの様子には、大人でも夢中になってしまいますし、対人関係やコミュニケーションが苦手な方でも、動物には話しかけることができるなど、動物たちには人間の心を和ませたり、ある種の能力を引き出してくれる、そんな不思議な力があるようです。

今回は、動物たちの力を借りて、心や身体の症状を回復させていく療法、アニマルセラピーについてお伝えしていきます。

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アニマルセラピーとは?

アニマルセラピーはその目的や活動によって大きく3つのタイプに分類されます。

動物を通じた医療活動「動物介在療法」

「アニマルセラピー」という言葉は、日本で作られた造語で、医療従事者が動物を用いて対象者に行う「療法」のことを指します。正式名称では「動物介在療法」(英語ではAnimal Assisted Therapy)といい、別名 AATとも略されます。

認知症高齢者、難病患者、不登校、引きこもりなどストレスや不安を抱えている人たちが動物と触れ合うことで精神的に健康になることができたり、ストレスや不安を軽減することができるなど生活の質を向上させることができます。

 

人とペットが触れ合う「動物介在活動」

アニマルセラピーとは、厳密には資格を持ったセラピストが行う治療のことをいいますが、人とペットが触れ合う活動を指す「動物介在活動」(AAA:Animal Assisted Activity)も広い意味でアニマルセラピーに含まれます。

これは有資格者が行う治療とは違い、ボランティアなど資格を持たない人も行えるものです。

セラピー対象者の生活の質の向上に重点が置かれており、動物と触れ合ったり話しかけることで、ストレスがやわらぎ、笑顔や会話が増える、一緒に遊んだり触れようとすることで運動機能の改善に役立つなど、活動を行うことで生活における良い変化が見られます

 

動物と命の大切さを学べる「動物介在教育」

小学校や幼稚園、障害者施設、専門学校などにインストラクターやボランティア等が動物と一緒に訪問して、動物と触れ合い、命の大切さを学ぶ教育プログラム「動物介在教育」(AAE:Animal Assisted Education)

みんなと一緒に学ぶことが難しい発達障害児などが犬と触れ合ったり学校など複数の場で授業の一環として学習したり幅広く活動されています。

アニマルセラピーの歴史

古代ローマ時代の「乗馬療法」が起源

アニマルセラピーの歴史は古く、1453年の古代ローマ時代に行われていた「乗馬療法」が起源ともいわれています。

これは、戦争でケガをした兵士のリハビリテーションに乗馬が用いられたとされ、この乗馬療法は現在では治療方法として確立されており、最も古くからあるアニマルセラピーとして、日本をはじめ海外でも治療に取り入れられています

 

1700年~1800年代

近代におけるアニマルセラピーとしては、1700年代の終わりころに、イギリスの精神病患者の治療施設である「ヨーク・レトリート」で、患者の自主性を高めるために、うさぎやアヒルなど動物の飼育を治療に取り入れたという記録が残っています。

1860年代には、ロンドンの精神科病院「ベスレム病院」やドイツのビーレフェルトにある「ベーテル」というてんかん患者の施設で、猫や犬など小動物とふれあうレクリエーションにより、症状を改善させる取り組みが行われていました。

 

近年のアニマルセラピー

その後、第二次大戦中のアメリカ・ニューヨーク州の空軍病院で、収容されている兵士の回復プログラムにアニマルセラピーが取り入れられ、戦後の1950年代には次第により多くの施設や病院で実施されるようになり、アニマルセラピーについて徐々に知られるようになっていきました。

アニマルセラピーを受けられる実施施設

医療としてのアニマルセラピー=動物介在療法(AAT)では、かならず目標を設定して、医療者のチームがその目的に沿ったプログラムで行い、実施後は結果を分析し効果を再評価します。

AATを受けられるのは、セラピーを治療に取り入れている病院や施設で、中には施設犬としてセラピードッグが常駐していることもありますが、多くは資格を持ったセラピストとセラピー犬(または他のセラピーアニマル)が外部から訪問して行うことが一般的で、料金は動物の種類や各団体によって変わります。

現在、訪問活動や普及に努めている団体には以下のようなところがあります。

一般社団法人アニマルセラピーこころサポート協会

2017年4月に神奈川県で設立された団体で、名称のとおり、さまざまな問題を抱える人たちの「精神面へのサポート」を目的に活動しています。
主に県内の精神科のデイケアや整形外科、小児科などに定期訪問してアニマルセラピーを行っているほか、働く人々のメンタルケアのために企業への訪問も行い、セラピードックとふれあってもらうことで、社員のストレス軽減や気分転換のきっかけづくりをしています。
動物介在セラピストの受講生も募集しており、動物介在セラピスト検定1級の受講者は協会の訪問セラピー活動に参加することができます。愛犬がセラピードッグの認定研修に合格すれば、一緒にアニマルセラピーの活動をすることも可能です。
アニマルセラピーこころサポート協会の問い合せ先
〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町2−6−39
TEL:080-4121-3112  受付時間 11:00-18:00 [ 土・日・祝日除く ]

ホームページ:http://kokoro-therapy.club/

 

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)

人と動物の共生を理念に設立されたJAHAは、30年以上前に特別養護老人ホームさくら苑と連携して施設犬によるアニマルセラピーを行った、国内では先駆的な団体です。
協会が推進しているCAPP活動(人と動物のふれあい活動)は、AAT・AAA・AAEの各活動を総称したもので、講習を受けた参加ボランティアが動物とともに介護施設、障害者福祉施設、老人ホーム、高齢者のデイサービスなどを訪問してふれあい活動を提供しています。
現在では活動先は北海道から九州まで各地に拡がり、団体に加盟している動物病院がこの活動を支えています。
日本動物病院協会の問い合せ先
〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町3-2-7 常盤ビル7F
TEL:03-6262-5252  受付時間 月~金曜日:9時30分~17時30分(祝日を除く)
ホームページ:https://www.jaha.or.jp/

 

特定非営利活動法人 日本アニマルセラピー普及協議会 らぽーる

「らぽーる」とはフランス語で「信頼関係」という意味で、人と人、人と犬との信頼関係を大切に、愛犬のしつけ教室、アニマルセラピストや家庭犬インストラクターの養成、ペットホテルなどの事業を展開している兵庫県の団体です。
他団体と同様に、病院や高齢者施設、幼稚園や保育園でのセラピー活動の他、刑務所「播磨社会復帰促進センター」での知的・精神障害のある受刑者の更生プログラム参加や、少年更生施設「加古川学園」における少年達と動物の交流活動の実施などの社会貢献も行っています。
日本アニマルセラピー普及協議会らぽーるの問い合せ先
〒675-1101 兵庫県加古郡稲美町下草谷441-10
TEL 079-496-2117 FAX 079-496-2118
ホームページ:http://rapport-dog.com/

アニマルセラピーの対象者とその効果

アニマルセラピーは、身体的な症状のほか心に働きかける部分が大きいので、病気など様々な理由で精神的な障害や問題を抱えているひとを対象に、幅広い年代の人に用いられています。

また、身近に動物がいることで、うつ症状やストレスが緩和されたり、血圧が安定したという報告例があり、アニマルセラピーの有意性については研究によるデータや実例に裏付けされたものも多く、論文等でも発表されています。

高齢者や認知症の方

高齢者では、身体の機能の低下や障害などから活動意欲が減少し、それに伴って他者とのコミュニケーションも減ってしまい、表情も次第に乏しくなるといった様子が見られます。

特にひとり暮らしや施設に長く入居している高齢者では、活動量が減ることで体力の低下や要介護度が高まる傾向もあります。そのような高齢者も動物とふれあうことにより、世話をしたり話しかけるといった自発的な活動が増え、表情や意欲にも良い変化が現れます。

認知症の高齢者に対してもアニマルセラピーは、ストレスやうつ症状の緩和や精神的な安定、活動量や発語に効果が期待できます。

 

子供(いじめ、虐待など)

家庭や幼稚園・学校などでペットを飼うことが、子供の情操教育にも役立つことは知られていますが、特に精神的な問題を抱えている子供にとって、動物は時に人間よりもその子供に近く寄り添うことができます。

例えば、いじめによる不登校や虐待、親との離別または死別などによって、大きなストレスを経験し心理的外傷(PTSD)を負っている子供の場合、見知らぬ大人にはなかなか心を開き話すことができないのですが、アニマルセラピーを行うことで動物を介してセラピストが治療のきっかけや子供との会話の糸口を見つけることができるようになります。

 

発達障害者(発達障害児)

発達障害やADHD、自閉症などの精神障害を持っている人にもアニマルセラピーは効果的です。

こうした障害のある人は、ことばでのコミュニュケーションが苦手なことが多いのですが、動物はことばが無くてもコミュニュケーションができることから、動物とふれあって関係を築くことで、自信や自主性が育ち、コミュニュケーション能力の向上にも良い影響を与えることができます。

また動物をなでることで体温の温かさや鼓動を感じリラックスすることが、ストレスを和らげ、精神の安定や行動に落ちつきをもたらします

カナダのモントリオール大学の研究
カナダのモントリオール大学が中心となって行った自閉症児に対するセラピードッグの生理的効果に関する研究では、自閉症を有する42人の子供の唾液中のコルチゾール量を測定し、セラピードッグの導入前・導入中・導入後の濃度変化を見るというものなのですが、副腎皮質ホルモンのひとつであるコルチゾールは、ストレスを感じると多く分泌されるので、起床時のコルチゾール量を基準に測定することで、ストレスレベルの変化を評価することができます。
研究の結果、導入後にはコルチゾール量は58%から10%に減少し、セラピードッグを取り去ると48%まで再度上昇したことから、セラピードッグが自閉症児のストレスの軽減に役立つということがわかりました。
出典:Psychoneuroendocrinology. 2010 Sep;35(8):1187-93. doi: 10.1016/j.psyneuen.2010.02.004. Epub 2010 Mar 1.

身体的な効果では、乗馬療法における平衡感覚の改善や筋肉の異常に対する効果が、筋電図等で直接測定したデータからも評価されています。

アニマルセラピーに適した動物

ストレスを和らげる作用を持つと言われるオキシトシンというホルモンは、母親が赤ちゃんに授乳している時に出るホルモンとして知られていますが、動物を抱っこしたり撫でることでも分泌されることがわかっています。

そのため、体温や鼓動を感じるほ乳類の動物や、手に載せてふれあえる鳥やハムスターなどの小動物が特にセラピーに向いているといえます。

犬(ドッグセラピー)

セラピードッグに多い犬種としては、大型犬でも性格が穏やかで人懐っこい、「ラブラドールレトリバー」「ゴールデンレトリバー」「ボーダーコリー」、小型犬では「ダックスフンド」「トイプードル」「マルチーズ」「シーズー」が挙げられます。

しかし、犬種が規定されているわけではないので、適性が認められれば、いずれの犬種でもセラピー犬になることができます

アニマルセラピーが盛んなドイツでは、従業員のストレスによる生産効率の低下やコスト増を改善するために、オフィス犬と呼ばれるセラピードッグの導入が進められ、効果を上げています

 

猫(セラピーキャット)

猫は犬と違い、芸を覚えたりしつけ通りに従順にするわけではなく、人間のそばで好きなように自由に過ごしています。

精神的な病気、特にうつ病の患者は猫のそんな姿に自分を投影し、プレッシャーから解放され、自分もありのままでもいいという気持ちになれるようです。

このリラックス効果から、猫は天性の優れたセラピストといえるでしょう。また、身体が不自由な人が膝に載せたり抱いたりする場合でも、猫は身体が柔らかいため犬よりも柔軟に対応することができます。

 

馬(ホースセラピー)

「乗馬療法」はアニマルセラピーの中では最も歴史のある療法です。

一般社団法人日本障がい者乗馬協会のHPによると、乗馬の効果は障害を軽減し克服するもので、具体的には平衡感覚や筋力の発達、脊髄の支持のほか、他の機能にも適度な刺激になることから、身体全体の機能向上に役立つとされています。

また、この身体的な効果の他に、解放的な屋外で行う乗馬には精神的な効果も多く、不安や多動の減少につながっています

 

イルカ(イルカセラピー)

イルカと一緒に泳ぐイルカセラピーは、1978年にアメリカ・フロリダで自閉症児を対象に初めて行われました。日本では1996年に沖縄県でアトピー患者を対象に行われています。
イルカセラピーも他のアニマルセラピーと同様に、単にイルカとふれあう活動である「イルカ介在活動=Dolphin Assisted Activity(DAA)」と、医療者が関わり治療の目的や目標を設定して行われる「イルカ介在療法=Dolphin Assisted Therapy (DAT)」の二つに分けられます。

発達障害を持つ子供がイルカセラピーによって、達成感を味わい自信を持つことで、社会性や自主性を持つようになったり、身体機能に障害のある人がイルカと楽しく泳ぐことがリハビリになり運動機能が向上するなどの効果があります。

 

魚(フィッシュセラピー)

哺乳類の動物以外には、魚もセラピーアニマルとして用いられます。これは、魚そのものに触れるというよりも、アクアリウム(水草や石などで幻想的に飾られた水槽)を泳ぐ熱帯魚の様子を見ることでストレスが和らぐ効果があり、アクアリウムセラピーと呼ばれています。

病院の待合室や福祉施設など水槽を設置している施設は多く、ゆったり泳ぐカラフルな魚たちが患者や来訪者の緊張をやわらげています

ほかにも、牛やうさぎ、ハムスター、鳥(インコ、オウム)などが、セラピーアニマルとして用いられています。

アニマルセラピストになるには?

アニマルセラピーを学べる専門学校に通う

アニマルセラピーは公的な資格はなく、ボランティアとして活動することも可能ですが、動物介在療法士として実際に医療の現場で働くには、動物のこと以外に人間の病気や心理学の知識を専門学校や大学、大学院で学ぶ必要があります。

民間資格はいくつかの団体で認定を行っている「動物介在療法士」「アニマルセラピーコーディネーター」「アニマルセラピスト」「アニマルカウンセラー」と呼ばれるものになり、必要な知識やスキルを身に付けれるので活躍の場が広がるでしょう。

要チェック  アニマルセラピーの「通信」「通学」講座はこちら

 

理学療法士、作業療法士などを取得する

また就職の幅をより広げたいのであれば、国家資格である、臨床心理士・理学療法士・作業療法士・看護師などの資格を取得してから、仕事に生かせる資格としてアニマルセラピスト資格を取る人も多いようです。

また、アニマルセラピーのさかんな外国へ留学して学んだり、アルバイト等で働きながらAAAのボランティアでセラピー活動を経験し、スキルアップや求人の道を探すという方法もあります。アニマルセラピストの収入は、持っている資格や勤めている施設・病院のお給料によります。

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おわりに

日本でのアニマルセラピーはまだまだ発展途上ですが、今後介護や医療、福祉の場面で普及していく療法として、そのさまざまなメリットに注目が集まっています。デメリットは特にない療法ですが、アレルギーを持つ人や動物に苦手意識のある人には、セラピーアニマルの種類の選び方や、訪問時の配慮が必要です。

セラピーを受けたいという方は、アニマルセラピーの普及やふれあい活動をしている団体は全国に多数あるので、一度連絡して体験してみることをおすすめします。

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