2018年4月から変わる改正介護保険関連法|6つのポイントを徹底解説

制度

2017年5月26日、参院本会議で改正介護保険関連法が成立しました。

今回の改正介護保険関連法のポイントは大きく分けて2つになります。

  1. 地域包括ケアシステムの深化・推進
    • 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進(介護保険法)
    • 医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)
    • 地域共生社会の実現に向けた取組の推進等(社会福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法)
  2. 介護保険制度の持続可能性の確保
    • 2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割に引き上げ(介護保険法)
    • 介護納付金への総報酬割の導入(介護保険法)

では、改正介護保険関連法によって具体的に何がどう変わるのか?ポイントをわかりやすく説明します。

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自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化(2018年~)

軽度者への重度化防止ケアの対策や議論は今まで各自治体で行われてきましたが、科学的根拠に基づいた効果的な重度化予防ケアがあいまいでした。

市町村が保険者として地域のマネジメントを推進するため課題を分析し、高齢者一人一人が能力に応じた自立生活を送れるように保険者機能が強化されます。さらに取り組みの改善によって、国は自治体に交付金を支給します。

数年前から重度化防止の先進的な取り組みを行っている埼玉県和光市と大分県では「認定率の低下」「保険料の上昇抑制」が見られました。

埼玉県和光市では、コミュニティケア会議を設置して要支援者を中心としたケアプランの検討、大分県では、リハビリ専門団体と連携をして地域ケア会議の立ち上げ支援を行った結果、改善することができました。 

 

こういった先進自治体の例を参考にして、自立支援・重度化防止に取り組むよう、法律により制度化されます。

制度化される保険者機能の強化
  • 介護保険事業(支援)計画の策定に当たり、国から提供されたデータの分析の実施
  • 介護保険事業(支援)計画に介護予防・重度化防止等の取組内容及び目標を記載
  • 都道府県による市町村支援の規定の整備
  • 介護保険事業(支援)計画に位置付けられた目標の達成状況についての公表及び報告
  • 財政的インセンティブの付与の規定の整備

地域ケア会議によるケアマネジメント支援がより活用されるとなれば、ケアマネジャーの必要性はさらに高まると考えられます。しかし、年々ケアマネジャーの志願者数は減っているのが現状です。

保険者の指定権限が強化される

小規模多機能型居宅介護などより普及させるために、競合サービスになる地域密着型通所介護が市町村介護保険事業計画で定める見込量に達している場合に、事業所の指定をしない(拒否できる)仕組みが導入されます。

市町村がサービス供給量をより調整しやすくできるように市町村協議制に新たに条件が付加され、営業地域などを制限できるようになります。

認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

高齢化が進み、現在、高齢者の4人に1人は認知症予備軍~認知症となっており、2025年(平成37年)には 約700万人(約5人に1人)が認知症になると言われています。

厚生労働省は、認知症の人が認知症と共によりよく生きていくことができるような環境整備が必要として、新オレンジプラン(認知症背作推進総合戦略)が打ち出されました。

新オレンジプランの基本的考え方
認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指します。

「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に基づき、厚生労働省は2025年までに関係府省庁と共同して認知症の人やその家族など様々な関係者から幅広く意見を聴取して策定します。

新オレンジプランの7つの柱
  1. 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
  2. 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
    • かかりつけ医の認知症対応力向上研修
    • 認知症サポート医
    • 認知症疾患医療センター
    • 認知症初期集中支援チーム
    • 病院勤務の医療従事者向け認知症対応力向上研修
    • BPSDガイドライン
    • 認知症介護実践者研修等
    • 認知症ケアパス
    • 認知症地域支援推進員
  3. 若年性認知症施策の強化
    • 全国若年性認知症コールセンター
    • 若年性認知症ハンドブック/ガイドブック
    • 若年性認知症施策を推進するための意見交換会
  4. 認知症の人の介護者への支援
    • 認知症カフェ
  5. 認知症を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
  6. 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
  7. 認知症の人やその家族の視点の重視

新たな介護保険施設「介護医療院」の創設(2018年4月~)

長期療養医療と日常生活介護を兼ね備えた一体型

今後、長期間増加が予測される医療・介護ニーズに対応するため、現行の「介護療養型病床」に代わり、「日常的な医療処置が必要な重介護者の対応・受入れ」や「看取り・ターミナル対応」など

長期療養のための医療と日常生活の介護のサービスを兼ね備えた一体型の「介護医療院」が新設されます。

また、病院や診療所から「介護医療院」に転換する際は、転換前の病院や診療所の名称を引き続き使用することができるようになります。

※現行の介護療養病床は23017年末で廃止予定でしたが、6年間延長の経過措置期間が設けられました。

 介護医療院
介護療養病床相当老健施設相当以上
基本的性格要介護高齢者の長期療養・生活施設
設置根拠介護保険法
※生活施設としての機能重視を明確化
※医療は提供するため、医療法の医療提供施設にする
主な利用者像重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する
認知症高齢者等(療養機能強化型A・B相当)
左記と比べて、容態は比較亭安定した者
施設基準医師:48対1(3人以上)
看護:6対1
介護:6対1
(参考:現行の介護療養病床の基準)
医師:100対1(1人以上)
看護、介護:3対1
※うち看護2/7程度
(参考:現行の老健施設の基準)
面積老健施設相当(8.0㎡/床)
※多床室の場合でも、家具やパーテーション等による間仕切りの設置など、
プライバシーに配慮した療養環境の整備を検討
低所得者への配慮補足給付の対象

共生型サービスの導入(2018年4月~)

障害者・高齢者への横断的なサービスが受けられる

現在、障害福祉サービスを利用している65歳以下の障害者が65歳になった時、介護保険サービスが優先になるため移行しなければならず、さまざなな支障が起きています。

65歳になって介護保険サービスに移行した際の支障
  • 自己負担増
  • 事業所を変えなくてはいけない
  • 今まで利用できていたサービスができなくなった
  • 慣れたヘルパーではなく色々なヘルパーが入る
  • ストレスが増える

高齢者・障害者への横断的なサービスが必要であるため、高齢者と障害児者が同一事業所でサービスを受けやすくし、 介護保険と障害福祉を一体的に提供できる「共生型サービス」が設けられます。

今までは、障害福祉サービス事業所の指定を受けていても、介護保険サービス事業所の指定は受けれませんでしたが、「共生型サービス」が新設されることで介護保険サービス事業所の指定を受けることができるようになります。

介護サービスの自己負担を3割に引き上げ(2018年8月~)

来年2018年8月から、所得が高い高齢者が介護サービスを利用した際の自己負担割合を現在の2割から3割に引き上げられることになります。

所得の具体的な水準は今後決定されていくが、厚生労働省は以下のように検討中とのこと。

単身世帯夫婦世帯
年収340万円
(年金収入のみは344万円)
年収463万円

高額介護サービス費でカバーできる

上記の条件にあてはまる方でも、介護サービスの利用が多い場合は、「高額介護サービス費」の申請をすることで、上限を超えた分があとで払い戻しがあり負担増にはなりません。

厚生労働省の見解では、自己負担を3割に引き上げることで、利用者の約3%に当たる12万人が負担増の対象になる見込みのようです。

関連記事 2017年8月 高額介護サービス費制度改正|対象・段階・申請方法を解説

高額介護サービス費の月額負担上限額を増額(2017年8月~)

中間所得世帯の負担上限額が増額される

2017年8月から、介護保険制度の維持と介護保険サービスの費用負担の公平化を図るため、中間所得世帯の高額介護サービス費の負担上限額が増額されます。

対象者は、「第4段階の対象者(世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人)」です。

負担上限額は、37,200円 → 44,400円 に変更になります。

平成29年8月から見直しされる内容
段階区分対象者負担上限額
第1段階・生活保護を受けている人
・老齢福祉年金受給者で世帯全員が市民税非課税の人
15,000 円(個人)
第2段階・世帯全員が市民税非課税の人
・前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が
 年間80万円以下の人
24,600 円(世帯)
15,000 円(個人)
第3段階・世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人
・第2段階に該当しない人
24,600 円(世帯)
第4段階・世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人44,400 円(世帯)
第5段階・現役並み所得者に相当する方がいる世帯の人44,400 円(世帯)
関連記事 2017年8月 高額介護サービス費制度改正|対象・段階・申請方法を解説

大企業社員に総報酬割を導入(2017年8月~)

介護保険制度は、国の国庫負担金と40歳以上の方の保険料が50%ずつの財源になっており、保険料は65歳以上の第1号被保険者と40~64歳までの第2号被保険者に分かれています。

第2号被保険者である40~64歳の現役世代が負担する保険料は、医療保険の各保険者(健康保険組合、共済組合、協会けんぽ、国民健康保険)の加入者数に応じた「加入者割」になっています。

そのため、第2被保険者の負担額は保険者問わず同額であり、所得に応じた公平な負担となっていないため、保険者間(健康保険組合、共済組合、協会けんぽ)では報酬額に比例した負担「総報酬割」が導入されます。

総報酬割の導入により大企業の社員、公務員ら約1300万人は負担増になり、中小企業を中心に約1700万人は負担減になります。

総報酬割の段階スケジュール

総報酬割は、2017年8月から「3分の1」「2分の1」「4分の3」と段階的にステップアップして2020年度には全面的に移行されます。

 2017年2018年2019年2020年
 ~7月8月~
総報酬割なし1/21/23/4全面

▼以下は「現行」と「総報酬割が全面導入された場合」の1人あたりの負担額になります。

 保険者現行総報酬割
健保組合
(全1,408組合平均)
5,125円5,852円
【+727円】
協会けんぽ
国庫補助がない場合の負担額
()内は実際の負担額
5,125円
(4,284円)
4,043円
【+241円】
共済組合
(全85組合平均)
5,125円7,097円
【+1,972円】

おわりに

今回の改正介護保険関連法のデメリットを挙げるなら、3割負担に当てはまる高所得の高齢者と総報酬割に当てはまる現役世代ではないでしょうか。

いずれにしても、世代間・世代内の公平性を確保して使いやすく不満のない介護保険制度、障害者・高齢者が住み慣れた地域でより暮らしやすい地域社会になるように、1つ1つの課題を解消して制度施行していただきたいと思います。

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