介護食の種類と5つの大切なこと|身体に合った介護食の正しい選び方

在宅介護

 数年前から、ドラッグストアやスーパーで介護用商品の売り場が広くなっていることにお気づきでしょうか。介護用の食品や栄養補助食品も、身近な店舗で手軽に購入することができるようになり、味も種類も増えています。

私たちは誰でも年を取ります。そして、様々な原因により「食べること」が難しくなることがあります。これは決して、認知症や特定の疾患だけが原因ではなく、加齢によって誰にでも起こり得ることです。

 「食べること」が大変になってきた方にとって、安心して喜んで食べていただける食事はどのようなものなのでしょうか。

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介護食とは

介護食とは、加齢や疾患などによって噛む機能や飲み込む機能が低下した方が、安全に食べられるように、かたさや物性を調整した食事のことです。

適切な介護食の利用によって食欲を増進し、誤嚥(誤って食品や唾液が気管に入り込むこと)や窒息など、食事時の事故リスクを軽減することができます。

高齢者にとっての「食」5つの大切なこと

高齢者にとっての「食」5つの大切なこと

高齢者にとっての「食」には、心身の健康を保つために次のような意味があります。

楽しみや生きがいを増やす

人間は、ただ生命を維持するために食べるのではなく、美味しいものを楽しく食べることで精神的な満足感を得ることができます。それが生きがいにもつながり、日々を健康で活動的に過ごす原動力になります。

生活の質を改善させる

「食べること」には、その前後にもいろいろな生活活動が付随しています。

例えば私たちが食事を摂ろうとしたとき、買い物に行き、調理をして、食べた後は片づけをします。買い物に出かけることは身体活動(運動)であり、調理は食べたいものを作る調理工程を「考える」ことが必要です。後片付けも同様に、使ったものをきれいにし、元の場所に戻すという一連の運動と思考が必要です。

他にも、お店で店員と会話をしたり、途中で知り合いに会ったりすれば、他者とのコミュニケーションが生まれます。このように「食べること」に伴う生活行為を通して、活動の量や質を維持・増進することができるのです。

生体リズムを整える

人間には、決まった周期で体の動きを変動させる体の仕組み「生体リズム」があります。その周期にはいくつかの種類がありますが、最も健康に関与しているのが24時間を周期とする、体内時計ともいわれる生体リズムです。1日3食の食事を規則的に摂ることでこの体内時計が整い、睡眠・自律神経・ホルモン・体温や血圧、排せつなど、様々な体調維持にかかわる生理機能のバランスが良好に保たれます。

体内バランスを保持する

生体リズムが整い、体のいろいろな生理機能のバランスが良好に保たれることで、心身ともに好循環が生まれ、心も体も健康的な状態を保つことができます。

栄養面だけではなく、規則正しい食生活を続けることで、体内のバランスが保てるのです。

低栄養状態を予防する

高齢者は歯の問題、摂食嚥下機能の問題、疾病の問題、心身機能の低下など様々な原因により食事の摂取量が減少することがあります。これまで「年をとると食が細くなって当たり前」と思われていた時代がありましたが、健康で活動的な生活を送るには、活動量に見合った栄養量が必要であることは高齢者も同様です。

何らかの原因により、健康な体を保つために必要なエネルギーやタンパク質が不足した状態のことを低栄養状態といいます。

気づかないうちに食事の量が減っていたり、偏ったりしていることで、次のような症状が現れます。

  • 体重の減少
  • 倦怠感(元気がない)
  • 筋肉量の減少(つまづく、転ぶ)
  • 免疫機能の低下(風邪をひきやすくなる)
  • 傷が治りにくい
  • 足がだるい、浮腫む

これらの症状は自分でも気づきにくく、その原因は複数が重なっていることも少なくありません。食事量の減少→体力・活気の低下→活動量の低下→さらに食事量の減少…といった悪循環を招きます。

上記のような症状に気づいたら、深刻な低栄養の状態を招く前に、食事の量が減っている原因を探し、無理なく食事の量が確保できる方法を考えてみましょう。

介護食の種類

食事の量が減ってきたと感じた時は、やはり何らかの原因で、これまで食べてきた食事が食べにくくなっていることがあります。食べにくくなった原因に対応するため、介護食にはいくつかの種類があります。

きざみ食とは

食品を一口大、または食べる人が口に運びやすい大きさに切った食事です。

きざみ食のメリット

噛み切ったり、噛む回数を減らすことができる

噛む力が弱くなってきた、義歯に不具合がある、一部の歯が欠損している、など「噛む」ことに不具合が生じている場合には、あらかじめ口に入りやすい大きさに切っておくことで、前歯で噛み切る動作が不要となり、奥歯で噛む回数も減らすことができます。よく噛んで食べることはもちろん必要なことですが、噛むことに苦痛があると、それが食欲を低下させる原因となることがあります。

スプーンやフォークで食べやすくなる

握力が弱くなったり、腕や手指に痛みや変形などの不自由のために箸が思うように使えない場合には、あらかじめ切っておくことで、スプーンですくったりフォークで刺すことが容易となり、うまく口に運べない、食べこぼすなどのストレスを軽減し、自分で食べやすくすることができます。

特別な調理の手間がない

ご家庭であれば、家族と同じ献立で対応できます。かたい食品は取り除き、包丁やキッチンばさみで、食べる人に適した大きさに切ります。市販のお弁当やお惣菜でも可能な方法です。

きざみ食のデメリット

むせたり、喉につまる危険がある

唾液が減少している場合や舌や口腔の運動機能に低下や障害がある場合は、口の中で食物がうまくまとめられずに、むせ込むことがあります。

また認知症の症状などにより、噛む回数が極端に少ない(まる飲み込み)場合や、かき込んで食べるような場合には、喉に詰まらせる危険があるため、切る大きさには注意が必要です。

ソフト食とは

食品の見た目をできるだけ損なわずに、舌でつぶせる程度までやわらかく調理した食事、または食材をミキサーにかけた後、凝固剤やとろみ調整食品を使用してゼリー状・ムース状に再形成した食事です。

ソフト食のメリット

元の料理に近い状態で提供される

やわらかく調理されていますが、元の料理に近い状態で提供できるので、「何を食べているのかわからない」ことによる食欲の減退が少なくなります。

スプーンだけで食べられる

握力が低下している場合や腕や手指の運動に制限がある場合でも、スプーンで容易にすくえるやわらかさなので、自分でも食べやすくなります。

歯で噛まなくても食べられる

義歯を使用していない場合や、噛む力が弱くなっている場合でも、舌や歯ぐきでつぶして食べることができます。

ソフト食のデメリット

調理に手間がかかる

家庭で作るには手間がかかります。食材をやわらかくなるまで加熱するには時間がかかりますし、ゼリー・ムース状に再形成するには、フードカッターやミキサーなどの調理器具と、固めるための凝固剤やとろみ調整剤などが必要となります。

異なる食材・食品をいつも同じ物性で仕上げるには、ある程度の熟練が必要な場合があります。

ミキサー食とは

食材をミキサーにかけて固形物を無くし、なめらかな状態にした食事です。必要に応じてとろみをつけます。

ミキサー食のメリット

噛まなくてよい

食材の粒がないので、咀しゃく機能に低下や障害がある場合でも食べることができます。

飲み込みやすい

なめらかな状態なので、必要に応じてとろみをつけることで嚥下機能に低下や障害がある場合でも飲み込みやすく、むせにくくなります。

ミキサー食のデメリット

見た目が変わる

ミキサーにかけることで、元の料理の状態が分からなくなります。

栄養価が下がる

ミキサーでなめらかな状態にするためには水分を加える必要があります。水分を加えた分、1食あたりの栄養価は減少するので、必要な栄養量を確保するためには、量をたくさん食べなくてはならないことになります。

調理に手間がかかる

料理ごとにミキサーをかける手間がかかります。フードカッターやミキサー、必要に応じてとろみ調整剤が必要です。

嚥下食とは

「噛む」「飲み込む」といった摂食嚥下機能のレベルに合わせて、食品の形態やかたさ、とろみの強さなどを調整した食事のことです。

日本摂食嚥下リハビリテーション学会により、食事を5段階・とろみを3段階に分類されています。5段階の食事の中には、嚥下障害の摂食訓練で使用される嚥下訓練食も含まれます。

嚥下食のメリット

誤嚥・窒息などのリスクを軽減できる

食べる人の摂食嚥下機能に合わせて物性を調整するので、誤嚥や窒息のリスクを軽減し、安全に食事を摂ることができます。

リハビリになる

物性が段階的に変化するので、摂食嚥下機能回復のための訓練食として利用できます。摂食嚥下機能のリハビリを行う際は、医師・歯科医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士などにご相談ください。

嚥下食のデメリット

レベルの判断が難しい

食べる人の摂食嚥下機能には、どのレベルの嚥下食が適しているのかを正しく決めるには、摂食嚥下機能の評価が必要です。医師・歯科医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士など専門家の意見が必要な場合があります。

調理が難しい

食べる人の摂食嚥下機能に適したレベルの嚥下食を作るには、物性を理解する必要があります。管理栄養士などの指導が必要な場合があります。

流動食とは

固形物を含まない、流動性のある食事です。重湯・スープ・牛乳・ジュースなどは流動食として使用できます。ミキサー食もその物性により流動食として使用できます。

また市販品や医師が処方する栄養剤にも、栄養量や成分を調整した濃厚流動食や特殊流動食があります。

流動食のメリット

消化が良い

固形物を含まないので、消化器系に疾病や障害がある場合にも使用することができます。(疾病や障害の状態により、医師の指示が必要な場合があります。)

流動食のデメリット

食事として認識しづらい

液体もしくは液体に近い物性のため、「食事」としてとらえにくく、満足感に欠けます。

栄養が足りない

市販の濃厚流動食や医師の処方する濃厚流動食などを併用しないと、通常の食材や食品から作る流動食だけでは、必要な栄養量を確保することが困難です。

自分の体に合った介護食の選び方

いろいろな種類の介護食がありますが、食べる人に合った介護食を選ぶことが何よりも重要です。市販の介護用食品には、選ぶ際の目安になる分類表記があります。

ユニバーサルデザインフードを利用する

市販の介護用食品にはユニバーサルデザインフードのマークがついているものがあります。

ユニバーサルデザインフードとは

年齢や性別・障害の有無などにかかわらず、誰にでも食べやすい食品を指します。日本介護食品協議会が制定した企画に適合した商品には、マークが付けられています。

かむ力、飲み込む力の目安により「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階に分けられており、マークと一緒に文字で説明も表示されているので、食品の状態がイメージしやすく選ぶ際の参考になります。

参考  日本介護食品協議会|ユニバーサルデザインフードとは

スマイルケア食を利用する

介護食を選ぶ目安として、農林水産省が新しく表示を整備しました。

スマイルケア食とは

これまで複数あった介護食の名称や分類分けを整理し、農林水産省が新しい枠組みとして整備したものです。

食べる人の摂食嚥下機能に合わせて、フローチャートに沿って適した食品を選ぶことができます。次のように青・黄・赤の3食に色分けされています。

青マーク 噛むこと・飲み込むことに問題はないものの、健康を維持するうえで栄養補給を必要とする方向けの食品
黄マーク 噛むことに問題がある方向けの食品
赤マーク 飲み込むことに問題がある方向けの食品

このうち黄マークと赤マークは、物性によりさらに3種類に細分化されています。

スマイルケア食を選ぶためのフローチャートは、農林水産省のホームページからも見ることができます。

要チェック  農林水産省|スマイルケア食

嚥下食ピラミッドを利用する

正式名称は「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」です。名称のとおり、日本摂食嚥下リハビリテーション学会により2013年に公表されました。

嚥下食ピラミッドとは

嚥下食ピラミッドは「食事の分類」と「とろみの分類」に分かれていて、それぞれ段階ごとにコード表示がつけられています。

コード分類の早見表には、物性の特徴などが細かく記されており、主に医療・福祉関係機関で使用される分類です。

参考  嚥下食ドットコム|嚥下食ピラミッドの概要

専門家に相談する

摂食嚥下機能の低下は、本人でも自覚しにくいことがあります。

  • 食事に時間がかかるようになった
  • 食事を残すようになった
  • やわらかいものを好むようになった
  • なんとなく元気がない
  • 水分を飲むときにむせることがある
  • 薬が飲み込みにくくなった

人間が「食べること」は、様々な神経伝達と筋肉の反射運動の連続で成立しています。

赤ちゃんの頃から食べる練習を始めて、食べているときに体のどこをどう使って食べているかなど、意識することはほとんどなかったと思います。

しかし実際は、とても複雑で多くの器官を駆使して食べています。上記のような症状や気になることがあれば、早めに専門家に相談することをお勧めします。

かかりつけ医、かかりつけ歯科医、ケアマネージャーなど、もしくは行政の福祉関係の窓口に相談してみてください。医師が必要と認めれば、管理栄養士から適切な介護食についてアドバイスを受けることができます。

おわりに

「義歯に痛みがある」「水分を飲むときにむせることがある」など、初めは小さなことかもしれませんが、そこから食欲が低下していくことは珍しくありません。高齢者の場合、食欲の低下は容易に体力・気力の低下を招きます。早期に適切な介護食を取り入れることで、食事の量と質が確保され、心身ともに健康な生活を維持していくことができます。

「食べること」について気になることがあれば、まずは気軽に、医療・福祉の専門家にご相談ください。

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