多くの人と接する仕事では、時にお客さんにイライラしたり困惑することはあるものですが、高齢者と長い時間接している介護職の場合、そのような場面は日常的によくあります。
利用者Aさんについイライラしてしまう。。。
利用者Bさんに何度も叩かれるし暴言も吐かれるからこっちも叩きたくなる。。
上記のように利用者との関係がうまくいかなかったり、相手の言動に感情的になってしまう方はこの記事を読むことで解決できます。
介護職員の高齢者に対する虐待のニュースに、他人ごとではないと感じている方もいるでしょう。そんな風にならないように、小さなイライラの段階で解消するにはどうしたらよいのでしょうか?
この記事では利用者さんにイライラして虐待したくなる瞬間、対処法、介護職員と利用者の信頼関係の築き方について詳しく解説しますのでぜひ参考にしてみてください。
利用者から嫌われる人と好かれる人の違い
介護する相手との関係を良くする近道は「利用者から好かれる人になること」です。
利用者は、高齢になり徐々にできないことが増えて、介護者の手を借りなければいけなくなったわけですが、元気だったときには社会的に地位があったり、仕事をバリバリ頑張っていた人や家庭を切り盛りし多くの子供を育て上げた人もいらっしゃいます。
また、人の手を借りることには抵抗を感じていたり、排せつなどのケアを受けなければならなくなったことにプライドが傷ついている人も少なくありません。 そういう場合に、自分が快く思っている人と、嫌いな人、どちらの手を借りたいと思うでしょうか?
好かれ親しまれる介護職員になることは、利用者のためにも良いことですが、職員自身にとっても介護がスムーズに行えて、ストレスも溜めずにすむという利点があります。 では、介護の現場で好かれる人、嫌われる人とはどんなひとでしょうか?
利用者に好かれる人とは?
寛容な人
利用者は高齢なので、会話をしていて思い違いもたくさんありますし、同じ話を何度もしたり、認知症などで理解力が低下している人もいます。
それに対してまともに言い返したり、相手が話した内容を何度も正していては、お互い疲れてしまいますし、雰囲気も悪くなるばかり。
確認が必要な重要な要件ではない限り、細かい間違いなどにはこだわらず、受け流せる寛容さがあると関係もうまくいきます。
相手に共感できる人
身体の不自由さや病気での心細さなど、不安を抱えている利用者は、愚痴や不安を聴いて寄り添い共感してくれる人に親しみや信頼を感じるものです。
ただ聞いてもらうだけでも心が軽くなったり、やる気が出るのは誰にも覚えがあることですが、それは高齢者の方も同じこと。
うなづいて話を聞くなど、相手が話したいことを引き出し共感を示してあげると親しみも増します。
いつも笑顔で話しやすい人
気軽に話しかけてくれる、また相手からも話しかけやすい雰囲気の人は好かれます。
高齢になると自分の殻に閉じこもりがちになり、人とのコミュニケーションに消極的になるひともいますが、それでも誰かに話しかけられ関わってもらいたいと感じている人が大半です。
そうした利用者にとっても話しやすい人になるには、いつも笑顔でいるのが一番。
例えば、単に黙って世話をするのではなく、笑顔で声掛けをしながら相手の様子や動き、時には気持ちにも注意しながら介助をすることで、事故やケガ防止にもなりますし、利用者にとっても『自分の気持ちをわかってくれている』と感じることで介助に協力的になり、結果的にお互い誤解やストレスなく過ごすことができます。
利用者に嫌われる人とは?
すぐに叱ったり怒る人
利用者がした失敗や思い違いなどに対して、すぐに叱ったり怒る人は嫌われます。
高齢になったため、あるいは認知症など病気によって、できないこと・忘れてしまうことは多くありますが、ほとんどの場合、本人にもどうしようもないことですし、そうしたことで自分よりも若い職員に叱られることは、プライドも大変傷つきます。
仕事や接し方が雑な人
忙しいとただ作業をこなしていたり適当になりがちですが、人を相手に仕事をしている、ということを忘れて、身体介助などで雑に接してくる人も嫌われてしまいます。
利用者は介護者の手を借りるしかないのですが、乱暴に扱われたり雑な接し方をされるのは、何より怖さや不安を感じてしまうし、不信感を持たれます。
利用者を虐待しそうになる瞬間
虐待は犯罪なので、あってはいけないことですし、そうなる前に対処をする必要があります。
しかし介護者も人間ですから、介護現場での利用者の態度や状況によっては感情が高ぶることもありますし、つい手をあげたくなる・虐待しそうになることもあるでしょう。
ある介護専門サイトのアンケート調査でも、介護職に就いている人のうち7割を超える人が「利用者を虐待しそうになったことがある」と回答しています。
実際に介護職に就いている方々の声から、虐待しそうになる瞬間とはどんなときなのか調べてみました。
暴言を吐かれた時
悪口や文句、嫌味などのほか、認知症の重い周辺症状がある利用者などから「死ね」など強烈な言葉を浴びせられたり、病気などによる妄想が原因で「お金を盗んだ」など身に覚えのないことで罵倒されるなどの例があります。
ある介護人材サービス会社の調査によれば、介護職員の約9割以上が、利用者から暴言・暴力を受けた経験があるそうです。
病気のせい、とは思っても、その人のために懸命に世話をしているのに毎回接するたびに暴言を吐かれると、その利用者さんを「嫌い」になったり「むかつく」のも無理はありません。
それでもストレスを抑えて仕事を続けると、精神的に追い詰められて「憎い」とか「殺したい」というような深刻な感情になり、虐待につながってしまうケースも。
暴力をふるわれた
暴力は暴言とセットになっていることが多く、女性の介護職員にとっては男性利用者の怒る・怒鳴るといった態度だけでも怖いと感じるうえに、殴られる、突き飛ばされるなど、身に危険が及ぶケースが加わるとより事態は深刻です。
殴られて目の周りが青くなってしまったのを化粧で隠して仕事をした、噛みつかれて腕に傷が残ったというものなど、仕事だからと許容できない事例も非常に多いです。
虐待といわれるものの中にも、もしかしたら介護者が自分の身を守るための実力行使もあるのではないか、とすら思われる介護現場の過酷な現状がうかがわれ、そうした状況のなかで理性を保って仕事をするのは難しいと言わざるを得ません。
わがままな態度をされた
高齢になって若いころより頑固になったりわがままになる人は見られますが、そんなわがままな態度も仕事に支障がでるほど毎日繰り返されると、介護者にとって大きなストレスになっていきますし、苦手・嫌いと感じる気持ちは態度にも出てしまうでしょう。
しかし「嫌われている」と感じると余計に、嫌がらせのようにする利用者も。
- いつまでも寝ないで深夜に何度もコールで呼び出す
- 話しかけても応えず無視する
- 食介や入浴介助などの介護拒否する
このようなことが何度も高じれば職員のほうでも「腹立つ」「うざい」と感じて、つい行動に出てしまうことに繋がります。
セクハラ
男性利用者からのセクハラは女性介護職員にとって大きな悩みです。
- 彼氏のことなどプライベートを詮索される
- 同僚の男性職員と話していると勝手に嫉妬する
- 執拗に下ネタを言われる
上記のような言葉だけのセクハラも「不快」で「気持ちが悪い」と感じるものです。
- 介助中に身体を触られる
- キスされそうになる
など行動を伴ったものの場合、不用意に振り払うと相手が転倒する恐れもあり、嫌だと思っても対処できず我慢してしまう職員が多くいます。
しかし他の接客業であれば警察に訴えられるレベルのセクハラなので、そうした利用者は施設から退去してもらうなど具体的な対応が図られるべきなのですが、職員を守る措置を講じてくれる職場は多くは無いようです。
そのため「弱者であれば何をしてもいいのか」と、利用者に対して強い不満を持ちながら、仕事を続けている職員にとっては、それがいつか怒りになって虐待につながることもあり得ることかもしれません。
クレームをつけられた
介護職員から「困難事例」と呼ばれる利用者は、全体の約10%程度いるといわれていて、どの施設でも対応に苦慮しています。
この困難事例の利用者では、先に挙げた暴言・暴力などのほか、些細なことでクレームをつけ金銭を要求するといった悪質な高齢者クレーマーもいます。
例えば、、、
- 家事援助に来たヘルパーが水道の蛇口を締め忘れていたといって水道代を要求する
- 入浴介助の際にシャンプーのすすぎが不完全で皮膚がかぶれたと治療費を支払わせる
このような事実確認が難しいクレームだと、対応に時間がかかれば運営に支障が出ることから、お金を支払い短時間で解決しようとする施設もあり、一度金銭を受け取ったクレーマーは同じような事例を繰り返す傾向にあります。
言われのないクレームをつけられ、その責任を追及されるのは、介護職員にとっては納得のいかないことで、何度も繰り返されれば感情的な行動にでてしまうこともあり得るでしょう。
利用者からの暴言暴力の対応方法
高齢者に対する虐待はしてはいけないことですが、同時に施設の入居者・利用者の介護職員に対する暴言・暴力も見過ごされていいはずがありません。
こうしたトラブルにはどのように対応すればいいかというと、まずその利用者の状況や体調を改めて確認してみます。
本人も家族も気づかないまま認知症を発症していて、その周辺症状として暴言や暴力が現れていることもあるので、認知症の有無を確認し、時には受診を勧めることも必要かもしれません。
適切な治療や投薬を受けてケアをすることで、暴言や暴力などの問題に改善がみられることもあります。 病気や体の不調の影響ではない場合は、家族からも本人の性格や出来事を聞き取ってみて原因を探ったり、担当者や関わり方を変えてみることで、解決できることもあります。
それでも対応できない場合は、施設を退去してもらったり利用を断ることもやむを得ないでしょう。
利用者との信頼関係の築き方
利用者と介護職員とはどうしても介護される側とする側として上下関係になりがちですが、職員にとって利用者は、他のサービス業でいえば「お客様」ですし、利用者本位で考えることを忘れないようにしましょう。
介護を受ける利用者は、多くの場合は世話をしてもらうことを「当然」とは考えていないでしょうし、自分でできないことを情けなく心苦しく感じていたり、職員に対してありがたい・すまないなどいろいろな感情を持っています。
利用者本位というのは、すべて言いなりになるということではなく、介護される側のこの気持ちに少し寄り添うということです。
それが接し方にも表れ、相手の立場になって望んでいることや適切なお世話をすることができます。 そのように利用者を尊重する気持ちは相手にも伝わり、スムーズなコミュニケーションが生まれ、信頼関係を築いていくことができます。
おわりに
多忙な介護職の現場では、利用者に対してストレスが溜まることが多くありますが、相手と上手にコミュニケーションを取り、利用者と職員がお互いに協力し合ってスムーズな介護を行えるようになれば、職員にとっては働きやすい職場になりますし、利用者にとっても居心地のいい場所となり良い循環が生まれるでしょう。
いま悩んでいる方は、今回の記事を利用者との関係や自分の仕事や日常を見直すヒントとして参考にしていただけるとうれしいです。
しかし、どうしても手に負えない、耐えられない、という場合は、「別の介護の職場への転職」や「介護以外へ職種を変える」ことも検討したほうが賢明です。 利用者が自分に合った施設を選べるように、職員も自分を生かせる職場を選べるのですから、心機一転あたらしい職場に移ることは、イライラの根本的な解消法と思います。