介護の123

回想法は認知症高齢者に治療効果大!効果的なやり方と資格や本を紹介

(最終更新:2018年1月27日)
回想法は認知症高齢者に治療効果大!効果的なやり方と資格や本を紹介

年齢を経てくると、ついさっきのこともうっかり忘れてしまったり、一方で何度も同じ昔話をして「また、その話」と家族に指摘されることも増えてきますね。

これは新しい記憶が失われやすい反面、古い思い出は普段意識にのぼらなくても蓄積されているという記憶のメカニズムによります。

「回想法」とは、昔のことを思い出す脳のトレーニングで、痴呆予防やデイケアのレクリエーションなど、高齢者ケアの様々な場面で用いられています。

スポンサーリンク

回想法とは

回想法の目的と定義

アメリカの精神科医であるロバート・バトラー(Robert N butler)氏が1960年代から提唱し始めた「回想法」は、これまで否定的に考えられていた高齢者の「回想」に、バトラーが肯定的な意味を見出したことから、研究が進められてきました。

回想法の目的は、高齢者がなじみの深い物や場所などをきっかけに、過去を回想することで、脳の働きを活発にしたり、現在の不安や葛藤をやわらげ生きる意欲を取り戻すことです。

レミニセンスとライフレビューの違い

この「回想」は、「一般的な回想」reminiscence(読み方=英語:レミニセンス)とlife review(ライフレビュー)などに分けて考えられます。

レミニセンスとライフレビューの違いは、レミニセンスが「過去の出来事を思い出すこととその過程」なのに対し、ライフレビューは単にあったことを思い出すだけではなく、自分の人生を評価・再構成するという「人生の回顧」と定義できるところです。

ライフレビューセラピーとも呼ばれる回想法を使ったセラピーは、自分史の振り返りをすることで、より心理的な問題の解決に重点を置いた治療の技法といえます。

回想法と共想法の相違点

この回想法と似た手法で共想法というものもあり、共通の話題をもとにした会話をするところは同じですが、共想法では順番や時間を決めて話し手と聞き手が役割を替え交互に話すこと、過去の回想よりも現在の日常の中から話題をとって語るのが異なる点です。

回想法に必要な資格

回想法は誰でも行うことができる

回想法を行うにあたって資格は特に必要ありません。

一般的には作業療法の中で作業療法士が行ったり、精神的な臨床の場面では臨床心理士が行うなど、医療や介護の現場でその仕事に必要な資格を持つ人が行っております。

また、言語聴覚士や産業カウンセラーなどが回想法の手法を用いていることもあります。日本回想療法学会が認定する通信講座で回想法について学び、心療回想士という資格を取ることもできます。

関連記事 作業療法士になるには

関連記事 言語聴覚士になるには 

回想法の効果

認知機能の改善効果

認知症の中核症状である記憶障害では「短期記憶」から障害が起こります。今日の日付など、ごく最近のことから分からなくなり、認知症の経過とともに次第に思い出せないことが増えていき「長期記憶」にも障害が出るようになります。

回想法では、聞き手とのコミュニケーションを図ったり話題への集中力も必要になるため、脳の血流を活発にする脳トレ効果があり、認知症予防や症状の改善に効果的とされています。

回想法の効果に関するエビデンス(科学的根拠)のレベルはそれほど高くはありませんが、日本では遠藤英寿医師(国立長寿医療研究センター)が2年に渡って検証した結果、回想法によって認知機能に改善が見られたと報告されており、記憶や知的な活動には一定の有効性があると考えられます。

認知症の周辺症状への効果

認知症の中でも代表的なアルツハイマー型認知症や、前頭側頭型認知症などは「変性疾患」と呼ばれる、脳の細胞が徐々に死滅していく疾患です。

脳が萎縮することで、記憶障害、認知機能や行動の異常、見当識障害がでてきます。

これらの認知症の治療には薬物療法も用いられますが、中等度以上の認知症で出現することの多い、暴言や暴力、徘徊などの問題行動や、抑うつなどの精神症状に対しては、非薬物療法(精神療法)である回想法や音楽療法も、認知症ケアとして用いられます。

認知症の患者は、何もわからなくなっていると思われがちですが、以前のようにできないというストレスが、問題行動の遠因になっている場合もあります。

回想法を行うことにより、患者自身が自尊心・感情を高めることで、行動が落ち着き生活の質が高められます。その結果、周囲の人間関係(家族、介護者、看護者など)にも良い影響を与え、ケアの質も高める効果があるといえます。

統合失調症やうつ病・ターミナルケアへの効果

統合失調症やうつ病の患者の場合でも、過去のいい思い出を回想することで心が安定したり、リラックスを感じることで、睡眠障害など病気による生活の問題点も軽減するとされています。

また、ホスピスなどターミナルケア(終末期医療)の現場でも回想法は用いられています。余命わずかながん患者では「否認」といって死への怖れから自分の状態や症状を否定する言動が現れることがありますが、こうした患者の怖れや不安の気持ちをやわらげて最後まで自分らしい人生を送れるよう、心の平和を取り戻すためにも回想法が使われます。

スポンサーリンク

回想法の実施方法には2つある

「個人回想法」と「グループ回想法」がある

認知症予防や改善のために行われる回想法は、おもに「個人回想法」と「グループ回想法」に分けられます。

個人回想法は、自宅、病院や特養など施設の部屋で、看護者または介護者と1対1で行われます。

グループ回想法は、グループホームなどの介護施設や通所のデイケア、デイサービス施設のレクリエーションとして、専門家により多人数で行われます。

  個人回想法 グループ回想法
回数 1クール4~10回 1クール8~10回
日時 毎週1回
1時間程度
毎週1回、2週に1回
同じ曜日、時間
1時間程度
場所 落ち着いて話のできる個室など 施設のホールやレクリエーションルーム
天気が良ければ屋外など
トイレが近くにある場所

では、それぞれどのように行えばよいか、そのやり方を見ていきましょう。

個人回想法の方法

個人回想法はおもに家族が行うことが多いと思いますので、普段の会話の延長として気軽にはじめてみましょう。

週に1回1時間ほどを目安に、時間と日程を決めて、4、5回から10回くらいまでをワンクールと考えて行います。

アルバムや昔の道具などを用意して、思い出すきっかけを作り質問してあげると話しやすくなります。本人の人生の節目になった出来事(卒業、就職、結婚や出産など)について質問していくのも良い方法です。

また、個人回想法をより効果的に進めるために、以下の点に注意します。

質問は具体的に

漠然と尋ねるのではなく、どこの学校に通っていたか、住んでいたのはどこ、周りには何があったかなど、具体的に答えられる質問をするようにします。

話したことを訂正したり評価しない

勘違いや間違いに気づいても、否定したり訂正せず、自由に話を続けることができるよう配慮し、話した内容についても、こうしたらよかったのになどと、評価や批評はしないように注意します。

無理強いせず相手のペースで

思い出せないことや話したくないことを無理に話させようとせず、他の話を引き出す工夫をしましょう。

グループ回想法の方法

グループホームやデイサービスで、レクリエーションやグループワークとして行われることの多いグループ回想法は、1グループあたり2名以上のスタッフ参加者8~10名くらいで、参加者の意欲の向上や参加者同士の活発な交流などを目標に行います。

多くの人が参加するので、以下のような事前の準備が必要になります。

グループ回想法の準備

その① 参加メンバーを決める

ある程度周囲とのコミュニケーションがとれる対象者の中から、毎回本人と家族に了承を得て参加メンバーを決めますが、招待状などを送ると参加意思の確認がしやすいでしょう。

MMSE(ミニメンタルステート検査)や長谷川式簡易知能評価スケールなどのアセスメントツールを使うと、対象者の記憶力、見当識などの状態も確認することができます。

関連記事 長谷川式認知症テストとMMSE検査で早期発見!認知度チェック

この認知症テストは、対象者へ質問し、その答えを点数で評価していくもので、回想法の実施前・実施後で行うことで効果測定にも役立ちます。

メンバーが決まったら、触れられたくない話題の有無についても把握できるように、本人や家族から詳しい聞き取り調査を行います。

  • 聞き取りの内容(例)
  • 生年月日
  • 出生地
  • 体調(記憶力、耳の聞こえ、視力も含む)
  • 家族関係
  • 経歴
  • 生活環境など

聞き取った個人情報は、アセスメントツールによる観察データとともに、管理には十分注意します。

その② スタッフを決める

スタッフは、1グループにつきリーダーとサブリーダーになる2名、可能ならサポートができるスタッフも数名決めておきます。

また、回想法で話された内容はプライバシーに関わるので他言しないこと、聞き取り内容の扱いなど注意点の確認のほか、回想法を行うには技術や知識も大切なので、スタッフは実施前に回想法について講習や勉強会で学び、模擬回想法(ロールプレイイング)で流れを練習しておくとスムーズです。

その③ 日時、回数の決定

グループ回想法は8~10回をワンクールとして、毎回同じ曜日や時間に継続して行います。

あまり期間が開いてしまうと、お互いを忘れてしまったり、話がまた始めからということになるので、週に1回から長くても2週に1回の間隔が適切です。

場所は、施設のホールやレクリエーションルーム、天気が良ければ屋外でもいいですが、トイレが近くにある場所を選びます。

また席の配置は、耳が遠い、声が小さい、など参加者の状況に配慮して、不自由のない席順にします。

その④ テーマを決める

回想法で話すテーマはワンクール分のテーマをあらかじめ決めておくと、内容や材料を準備しやすく、例のように1月から12月まで、実施月に合わせた年間行事や季節の風物から順にテーマを取っていくと、回数が多くても決めやすいでしょう。

回想法のテーマ一覧
1月 お正月(羽根つき、コマ回し、お年玉)
2月 節分(豆まき)
3月 ひな祭り(ひな人形、菱餅、桃の花)
4月 入学・卒業式(学校、先生、友達)
5月 端午の節句(菖蒲の花、こいのぼり)
6月 運動会(玉入れ、綱引き、リレー)
7月 夏休み(海水浴、花火、虫取り)
8月 お盆(お墓参り、盆提灯)
9月 お月見(月見団子、ススキ)
10月 紅葉がり、体育の日
11月 七五三、酉の市
12月 大晦日(除夜の鐘、年越しそば、大掃除)

ほかにも、幼年期、学童期、青年期、壮年期ごとに、「好きだった遊び」「学校の思い出」「最初に付いた仕事」「流行っていた娯楽」「定年後の趣味」などこれまでの人生について順に回想していくようなテーマ設定もできます。

その⑤ 材料、道具を用意する

お題の内容に沿って、音楽や絵画、画像、動画や映像などから回想のきっかけづくりに使う材料や道具を準備します。

音楽

子どもの頃を思い出す童謡や、流行っていた歌謡曲などをCDやカセットで流すことで、その当時のことを思い出すのに役立ちます。曲名あてクイズなどは楽しみながら回想できるので、デイケアのレクなどにも取り入れやすいでしょう。

写真や絵

昔話の絵本や昭和の風景写真、往年のスターのブロマイドなども、回想法の道具になります。回想法のパソコンソフトを使ったり、無料イラストサイトなどを利用し画像をプリントするのもよいでしょう。


無料イラストなら【イラストAC】

懐かしい風景に色づけできる塗り絵なども、作業をしながらイメージを拡げてゆくのにいい材料です。

また、回想法用に販売されている「ミッケルアート」というツールも便利です。

これは、古い時代の家庭の様子、昔の遊びなどが描かれている絵から、ゲーム感覚で絵の中に隠れている動物を探したり、思い出を話していくコミュニケーションツールで、ひとり1枚ずつ絵が描かれたカードを配り見てもらいます。裏にはその絵に関する質問も書かれているので、慣れないスタッフでも使いやすい回想法グッズです。

映像・動画

古い映画や映像は、インターネットの動画サイトやビデオソフト、「NHKアーカイブスのNHK名作選みのがしなつかし」の利用で見ることができます。特に、「NHKアーカイブス」では、回想法用に懐かしい番組や昔のニュース映像を年代やテーマごとに選んで視聴できるので、探しやすく便利です。

ほかにも、施設や団体でのレクリエーション用に、懐かしい昔の道具を箱に詰め「回想法キット」として貸し出している自治体もありますし、アロママッサージと回想法を組み合わせたり、料理のレシピを活用するなど、いろいろなものが回想法の材料に利用できます。

関連記事 認知症の予防改善にアロマオイル驚きの効果?|たけしの昼夜配合とは

グループ回想法の具体的手順

準備が整ったら次の手順で行います。

  1. 回想法についての説明
    どんなものなのか参加者に簡単に説明し、聞いたエピソードを他の場で話さないことや批評しないことなど、約束ごとについてもお知らせします。
  2. 自己紹介
    その日のテーマを伝え、初回や初めて参加する人がいるときは自己紹介を行います。
  3. 交流する
    準備した材料や道具を利用しながら、進行を担当するリーダーが回想を促し、参加者同士が交流します。
  4. 終了
    今日の感想を聞き、次回の案内をして終了します。

グループ回想法の留意点

リーダーは傾聴を心がけますが「それはどんなものか教えてください」「どんな気持ちでしたか」など、適度な声掛けをしながら進行していきます。

サブリーダーやスタッフは、援助が必要なひとに目を配り「今はこんな話が出ていますね」「どう思いますか」など、みんなが会話に参加できるように配慮します。

戦争中の記憶など悲しい回想が出た場合も、否定したり遮らず、思いを受容するようにしましょう。

回想法自体に危険なことやデメリットは特にありませんが、認知症の方の場合、現実を見失うなど混乱するリスクもあるので、回想法の最後には必ず今日の日付を「今日は〇年〇月〇日です」というように声に出し手を叩き、「今」に戻って終わります。

おすすめの回想法の本

回想法についてさまざまな本が出版されておりますが、中でもおすすめの3冊をご紹介します。

『なぜ、「回想療法」が認知症に効くのか』小山敬子 (著)

医師である著者は「学校体験を回想する壮大な仕掛け」として、介護施設「おとなの学校」を運営、回想療法による認知症治療に取り組み、認知症介護施設の経営側から見た現状が綴られております。回想法についてわかりやすく書いてあり、入門書として最適です。家族にしかできない回想法もあるので、もし、家族の誰かが認知症になったらあると必ず役に立つ本であるでしょう。

 

『Q&Aでわかる回想法ハンドブック―「よい聴き手」であり続けるために』中央法規出版

回想法の考え方から目的、計画・準備、セッションにおける実践技術、記録、効果評価、研修まで、実践者が知りたいテーマをQ&Aでわかりやすく解説されています。デイサービスなどの施設で働かれている方は、すぐに使える内容になっていますので、勉強して活用してほしい1冊となっています。

 

『認知症予防のための回想法―看護・介護に活かすアプローチ』鈴木正典 (著)

回想法の概要が知れるのはもちろんのこと、写真が豊富に掲載されているため、この本だけで回想法の実践をすることも可能です。介護現場での要点が記載されていますので、介護・医療・福祉に携わっている方に参考になる本です。

おわりに

回想法は、参加者同士にとっては同じ時代の思い出を共有することで新しい交流が生まれ、楽しみや生きがいを感じられるというメリットがあり、介護・看護者や家族にとっては、知らなかったエピソードを知ることで、より理解や共感ができるようになり、それは毎日のケアにも良い影響を与えるはずです。

記事を参考に、楽しいレクリエーションやケアの中に回想法をぜひ取り入れてみてください。

この記事を見た人は以下の関連記事も見ています


スポンサードリンク



 

スポンサードリンク







 

Twitter で
(最終更新:2018年1月27日)