2017年8月 高額介護サービス費制度改正|負担上限額の見直しを解説

費用

2017年4月12日に衆院厚生労働委員会での介護保険関連法案改正案が強行採決されました。高額介護サービス費は改正によりどのように見直しされたのかをご説明します。

高額介護サービス費見直しの経緯

介護保険制度の公平性を保持する

近年もの凄いスピードで高齢化が進み、介護サービスを利用する人達の介護費用や保険料が年々膨れ上がってきています。

そうした中で以下のような不満も少なからずあります。

  • 介護サービスを利用している方と利用していない方の負担が変わらない
  • 一定以上の収入がある高齢者の負担が少ない

こういった世代間・世代内の不公平を無くし公平性を保つため、さらに介護保険制度を維持するため、能力に応じた負担がより必要との観点が財務省・厚生労働省の考えです。

今回、2017年8月から「一部の対象となる人の負担上限額が引き上げられる」ことになりました。

高額介護サービス費制度の改正内容とは?

今回の改正は平成29年(2017年)8月から適用になります。介護保険制度の維持と介護保険サービスの費用負担の公平化を図ることを目的としています。

平成29年8月から対象者・段階・負担上限額の見直し

今回の改正で見直しされるのは、「第4段階の対象者(世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人)」です。

負担上限額は、

37,200円 → 44,400円 に変更になります。

平成29年8月から見直しされる内容
段階区分対象者負担上限額
第1段階・生活保護を受けている人
・老齢福祉年金受給者で世帯全員が市民税非課税の人
15,000 円(個人)
第2段階・世帯全員が市民税非課税の人
・前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が
 年間80万円以下の人
24,600 円(世帯)
15,000 円(個人)
第3段階・世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人
・第2段階に該当しない人
24,600 円(世帯)
第4段階・世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人44,400 円(世帯)
第5段階・現役並み所得者に相当する方がいる世帯の人44,400 円(世帯)
3年間の時限措置
ただし、介護サービスを長期に利用している方もいるため、年間の負担額が増えないように、同じ世帯の全ての 65 歳以上の方(サービスを利用していない方を含む。)の利用者負担割合が1割の世帯は、3年間に限り年間 446,400 円(37,200 円 ×12 ヶ月)の上限が設定されます。
つまり、平成32年(2020年)7月までの措置になります。
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第4段階の対象者に該当するか確認する

自分や世帯内のご家族が今回改正された第4段階に当てはまるかどうか確認してみてください。

同じ世帯内の誰かが市区町村民税を課税されていますか?
  • 課税されている場合 37,200 円(月額) → 44,400 円(月額)

※1 現役並み所得者世帯は従来から 44,400 円

①と②の両方に該当しますか?

① 同じ世帯の全ての 65 歳以上の方(サービスを利用していない方を含む。)の利用者負担割合が1割
② 世帯が現役並み所得者世帯(※1)に該当しない

  • 該当する場合 → 年間の上限 446,400 円(37,200×12 ヶ月)を適用【新設】

※1 同じ世帯に 65 歳以上で課税所得 145 万円以上の方がおり、同じ世帯の 65 歳以上の方の収入の合計が520 万円以上(単身の場合は 383 万円以上)である場合。

高額介護サービス費とはどんな制度?

介護が必要となり、介護保険の介護サービスを利用する場合に支払う利用者負担(1割~2割)には、月々の上限負担額が設定されています。

高額介護サービス費制度とは、介護保険の介護サービスを利用して、1ヵ月に支払った利用者負担(1割~2割)の合計が負担の上限を超えた場合、超えた分が申請によって払い戻される制度になります。

高額介護サービス費制度は、償還払いであるため、一度かかった費用を利用者が一旦全額支払い、市区町村に申請をすることで払い戻されます。

高額介護サービス費の利用者負担(1割、2割)の基準を確認

自分が1割負担なのか?2割負担なのか?以下の表の全てに当てはまる方は「2割負担」になります。したがって1つでも当てはまらない方は「1割負担」になります。

全てに当てはまれば2割負担
  • 65 歳以上の方
  • 市区町村民税を課税されている方
  • ご本人の合計所得金額(※1)が 160 万円以上の方(年金収入のみの場合、年収 280 万円以上)
  • 同じ世帯の65 歳以上の方の「年金収入とその他の合計所得金額」(※2)が1人で280万円以上の方、65 歳以上の方が2人以上の世帯で 346 万円以上の方

※1 「合計所得金額」とは、収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額です。
※2 「その他の合計所得金額」とは、合計所得金額から、年金の雑所得を除いた所得金額をいいます。

高額介護サービス費の対象者・段階・上限額は?

高額介護サービス費には、対象者の所得に応じて段階区分ごとに、介護サービスの負担上限額が設定されています。

1ヶ月あたりの負担上限額になります。

段階区分対象者負担上限額
第1段階・生活保護を受けている人
・老齢福祉年金受給者で世帯全員が市民税非課税の人
15,000円(個人)
第2段階・世帯全員が市民税非課税の人
・前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が
年間80万円以下の人
24,600円(世帯)
15,000円(個人)
第3段階・世帯の全員が市区町村民税を課税されていない人
・第2段階に該当しない人
24,600 円(世帯)
第4段階・世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている人44,400 円(世帯)
第5段階・現役並み所得者に相当する方がいる世帯の人44,400 円(世帯)

段階区分は5つになり、本人の合計所得金額をもとに決定されます。

合計所得金額とは?
収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額になります。

高額介護サービス費の世帯合算の計算方法

高額介護サービス費の対象となる方が世帯に複数いる場合の「負担上限額」「払い戻し額」の計算方法例を作成しましたので参考にしてください。

例1)

要介護者の構成
(負担上限額)
世帯の上限額自己負担額要介護者ごとの負担上限払い戻し額
要介護者(夫)
第3段階
(24,600円)
24,600円30,000円24,600×30,000÷(30,000+10,000)
=18,450円
30,000円-18,450円
=11,550円
決定される上限額は
24,600 > 18,450 → 18,450円
要介護者(妻)
第2段階
(15,000円)
10,000円24,600×10,000÷(30,000+10,000)
=6,150円
10,000円-6,150円
=3,850円
決定される上限額は
15,000 > 6,150 → 6,150円

こちらの世帯での払い戻し額の合計は、11,550円+3,850円=15,400円になります。

例2)

要介護者の構成
(負担上限額)
世帯の上限額自己負担額要介護者ごとの負担上限払い戻し額
要介護者(夫)
第3段階
(15,000円)
24,600円30,000円24,600×30,000÷(30,000+10,000)
=18,450円
30,000円-15,000円
=15,000円
決定される上限額は
15,000 > 18,450 → 15,000円
要介護者(妻)
第2段階
(15,000円)
10,000円24,600×10,000÷(30,000+10,000)
=6,150円
10,000円-6,150円
=3,850円
決定される上限額は
15,000 > 6,150 → 6,150円

こちらの世帯での払い戻し額の合計は、15,000円+3,850円=18,850円になります。

高額介護サービス費の「対象」「対象外」の介護サービスは?

介護保険サービスを利用する上で、どんなサービスが高額介護サービス費の「対象」で「対象外」なのかをご確認ください。

「対象」となる介護サービス

  • 介護給付
  • 予防給付
  • 第1号事業

「対象外」となる介護サービス

  • 特別養護老人ホーム、ショートステイなど施設サービスの居住費、食費、日常生活費、差額ベッド代
  • 福祉用具購入費
  • 住宅改修費

高額介護サービス費の申請方法

各市区町村の担当窓口にて行う

高額介護サービス費の申請は、初回の場合、お住まいの市区町村の窓口に行き、申請手続きを行います。一度申請をすると次回移行の申請の必要はありませんので、忘れずに行いましょう。

なお、対象者には、各市区町村から申請書が郵送されてきます。必要事項を記入の上、以下の必要書類を持参して提出してください。

申請時の必要書類

高額介護サービス費の申請時に必要な書類は以下になります。

  • 高額介護サービス費支給申請書
  • 介護保険被保険者証
  • 介護サービス利用料の証明書(領収書の写し、介護サービス利用明細書、支払いが口座振替の場合は預金通帳の写し)
  • 印鑑(認印)
  • 振込先の預金通帳か口座番号がわかるもの
  • 老齢福祉年金受給者証(老齢福祉年金受給者のみ)
  • 委任状(申請者本人が来れない場合)
  • 代表相続人届(申請者本人が亡くなっている場合)

一度申請をすると次回以降、高額介護サービス費に該当する場合には、登録された口座に振り込まれる仕組みになっていますので非常に便利です。

高額介護サービス費はいつ振り込まれる?

高額介護サービス費の払い戻し額は、各市区町村によってまちまちで早いところであれば、高額介護サービス費が発生した月に振込まれます。

遅いところですと、高額介護サービス費が発生した月から4ヶ月以上もかかるところもありますのでお住まいの市区町村に確認してみてください。

高額介護サービス費の時効について

時効はいつまで?

高額介護サービス費は、2年で時効になり申請ができなくなります。つまり、介護サービス利用月の翌月の初日から2年になります。

ただし、自己負担分をサービス提供月の翌月1日以降に支払った場合には、支払った日の翌日が時効の起算日となります。

心当たりがある方は早急にお住まいの市区町村窓口に行き確認をしてください。

注意
ただし、保険料滞納者であり給付制限を受けていて、自己負担割合が3割となっている人については、対象となりませんのでご注意ください。

時効の起算日と消滅時効の成立日はいつ?

時効の起算日と消滅時効の成立日(2年)の具体例を挙げますので参考にしてください。

例1)

  1. 介護サービスの提供月が平成29年8月の場合
  2. 平成29年9月1日が時効の起算日
  3. 平成31年8月31日で消滅時効が成立【2年経過】

例2)

  1. 平成29年8月に提供された介護サービスの自己負担分を10月15日に支払った場合
  2. 平成29年10月16日が時効の起算日
  3. 平成31年10月15日で消滅時効が成立【2年経過】

高額介護サービス費の時効中断とは?

通常、高額介護サービス費の対象者には、お住まいの市区町村から勧奨通知(申請書や通知書)が届きます。

厚生労働省の見解では、

高額介護サービス費の支給対象となる者の有する高額介護サービス費を受ける権利の存在を認識し、その認識を表示したものであると認められるものは、民法第147条第3号の「承認」にあたり、時効中断事由となると考えられる

とのことから、市町村から勧奨通知(申請書や通知書)が届き、受け取った時点で時効中断事由になると考えられます。

ただし、あくまで上記の根拠は当サイトの見解であるため、同様のケースがある場合は、お住まいの市区町村に確認してみてください。

高額介護サービス費制度を利用できなくなるケース

40歳以上から納めなければいけない介護保険料を納付期限から2年間滞納した場合は、高額介護サービス費を受けることができなくなります。

介護保険料は1年滞納で償還払い(一旦全額自己負担)に切替え、1年6ヶ月滞納で保険給付支払いが差し止められ滞納保険料分に充てられます。

2年滞納してから介護保険料の納付を再開しても3割負担からスタートになってしまいますので、必ず納付するようにしましょう。

高額介護サービス費を利用した方がいい人は?

高額介護サービス費制度を利用した方がいいのは、以下のような人になります。

  • 毎月の介護費用が高くて困っている人
  • 介護費用のために生活が圧迫して借金が増えている人
  • 1割負担から2割負担になり困っている人

高額介護サービス費の利用件数

上記の表を見ると、第2段階である「世帯全員が非課税で合計所得金額及び課税年金収入額の合計が80万円以下の方」が93万3,345件と一番多いことがわかります。

おわりに

実際にこの高額介護サービス費制度を利用している人、知っている人は、あまり多くなく、申請をせず払い戻しされていない方はまだまだいるのが現状です。

当てはまる人は自己負担額が大きく減額される場合がありますので、お住まいの市区町村に確認してみてください。

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