公正証書遺言とは?書き方・必要書類・費用を徹底解説

遺言

公正証書遺言とは?

公証人が作成した遺言書

 公正証書遺言とは公証人に依頼し作成してもらう遺言書で、作成後の保管も公証役場で行われます。

公証人とは、公正な第三者として国民の権利や義務に関わる公証事務を行う人のことで、公証役場とはその業務を行うところです。

弁護士や裁判官など法律実務を長く経験した人が、法務大臣に任命され公証人となります。

この公証人が作成した遺言書は公正証書としての効力を持ち、本人の意思を間違いなくあらわした非常に信頼性のあるものとされます。

公正証書遺言の作成は増加傾向にある

公正証書遺言は通常、公証役場において証人2名以上が立ち合い、遺言者が口頭で述べる内容を公証人が作成していきます。

公証役場に出向けない人に対しては、病院等に訪問して作成することも可能です。公証人には守秘義務があるので、聞き知った内容を外部に漏らすことはありません。

日本公証人連合会の調べによると、平成28年度の公正証書遺言の作成件数は10万5千件以上となっていて、10年前の7万件余りから年々増加しています。

 

 
出典:日本公証人連合会

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言のメリット

有効な遺言書を間違いなく作成できる

自筆証書遺言など自分で作成する遺言書は、書き方が規定に沿っていなかったり不備があって、無効になる可能性がありますが、公正証書遺言は専門家である公証人が作成するため、遺言者の意向を正確に反映した、間違いのない遺言書を作ることができます。

偽造や改ざんのおそれがない

作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるので、遺言書が偽造・改ざんされる可能性は無く、他の遺言書のような管理の不安がありません。

紛失の心配がない

作成後、遺言者には正本といって遺言書の原本と同様の効力があるものと謄本の2部が渡されますが、無くしてしまったときは再交付することもできます。

また、相続の開始後に紛失した場合でも、相続人が交付請求を行い謄本を交付してもらえます。

原本は、遺言を作成した翌年から20年は公証役場で保管され、遺言者の死後も最低20年は公証役場で保管されます。

障害がある人も作成が可能

公正証書遺言の作成では、通常は遺言者が内容を申述し口頭で確認が行われますが、聴力に障害がある人や病気などの影響で会話ができない人、手が不自由で自書ができない人も、筆談や手話通訳者を通じて内容を確認することで作成ができます。

公正証書遺言のデメリット

証人が必要

公正証書遺言には、証人2名が必要になります。

証人及び立会人の欠格事由を定めている民法974条によると「未成年者」「推定相続人及び受遺者、並びにこれらの配偶者および直系血族」「公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記及び使用人」は証人にはなれません。

これらの人を除いて、利害関係がなく遺言書の内容を知られても安心な、信頼できる人を2名見つけることはそう簡単ではありません。

見つけられない時は公証役場で証人を紹介してもらうこともできますが、その場合は日当の支払いが必要です。

手数料がかかる

公正証書遺言を作成する時には公証役場に手数料を支払います。

この手数料は政令により、遺言する財産の金額・価値によって定められていて、多くの財産を遺す人は、その分手数料も高くなる仕組みになっています。

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公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の違い

 

公正証書遺言以外の、ふたつの遺言書の特徴から、それぞれの違いを見てみましょう。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、いつでも思い立ったときに自分で作成することができる手数料や証人が要らない遺言書です。

いちばんの特徴は全文を自筆で書くことで、このほか作成年月日の記載、署名、捺印することが規定されています。ワープロやパソコン、タイプライターの使用はできず、財産目録等もすべて自書する決まりになっています。

自分で作成するものなので、専門家が作成にかかわる公正証書遺言と違い、記載内容に不備や記入間違いがあった場合は、せっかく遺した遺言が無効となってしまうこともあります。遺言の執行には、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

秘密証書遺言とは

遺言書の内容を秘密にしておきたい場合に、作成されるのが秘密証書遺言です。

自分で作成し封印した遺言書を公証役場に提出し、公証人が封紙に提出日と遺言者の申述を記載し、公証人と証人2名、遺言者がそれぞれ署名と押印をします。

この手続きは遺言の存在を証明してもらうことが目的で、内容に関して公証人や証人は関与しないので、一切秘密にできます。

おもに本人が保管しますが弁護士に依頼し保管してもらうこともあります。

手数料は財産額にかかわらず11000円で、相続の発生時には自筆証書遺言と同じく、家庭裁判所で検認を受けなければ、開封や遺言の執行ができません。

他の2種類と比べて、作成する人がかなり少ない遺言書です。

 

上記の2種類と比べると、検認が不要、確実性があること、保管時の心配がないことは、公正証書遺言に特徴的なメリットであるといえます。 

公正証書遺言の作成手順と必要書類

①依頼前の準備

公正証書遺言の作成を依頼するには、あらかじめ遺言の内容を自分で考えて原案を書き、証人を依頼できる数人の候補を考えておきます。

 

②公証役場へ連絡

最寄りの公証役場に連絡し打ち合わせをする日を決めます。

参考  公証役場リスト 日本公証人連合会HP

 

③依頼と事前打ち合わせ

この打ち合わせでは遺言の目的を公証人に伝え、原案をもとに内容を詰めていきます。

証人を誰にするかと遺言作成日を決定し、遺言執行人の有無なども確認します。

各公証役場や事案によって必要な書類が異なることがあるので、依頼する公証役場に確認が必要ですが、一般的には以下の書類が必要です。

必要書類チェックリスト
  • 遺言者の印鑑証明書(遺言書の作成日前3か月以内に交付されたもの)
  • 相続人と遺言者の続柄を表す戸籍謄本(遺言書の作成日前3か月以内に交付されたもの)
  • 遺贈する場合は受遺者の住民票、受遺者が法人の場合は資格証明書
  • 財産に不動産がある場合は、登記簿謄本と固定資産評価証明書または都市計画税納税通知書中の課税明細書
  • 証人予定者の住所・氏名・職業・生年月日(メモで可)
 

④遺言の作成

公証人の文案を遺言者が確認した後、指定期日に公証役場で(または病院など遺言者の元に公証人と証人が出向いて)遺言の作成を行います。

作成日に必要なものチェックリスト
  • 遺言者本人の実印(印鑑証明書の提出が必要な場合もあります)
  • 証人の認印(証人と公証人に面識がない場合は、証人の本人確認書類も必要)
  • 公証役場に支払う費用(作成手数料、正本・謄本の料金、出張の場合は加算額のほか出張費と交通費も)
  • 証人に支払う日当(専門家や公証役場に証人の手配を依頼した場合)

司法書士・弁護士・行政書士に依頼する場合の比較

公正証書遺言の作成に関する手続きは専門家に依頼することもできます。

行う業務は、

  • 遺言の原案作成
  • 必要書類の取り寄せ(戸籍謄本や住民票、登記事項証明書など)
  • 親族関係の確認
  • 公証人との打ち合わせ
  • 遺言執行者や証人となる

などですが、それぞれに得意な分野があります。

司法書士に依頼する場合

司法書士は法律に関する手続きや書類の作成が仕事です。なかでも法人の登記や不動産の登記は、弁護士でも行うことができますが司法書士の得意分野です。行政書士には登記業務はできません。

相続財産に不動産がある場合は、有効な公正証書遺言があれば遺産の分割協議は不要なので、本人の戸籍謄本と相続人の戸籍謄本があれば登記の手続きができ、その他の戸籍の附票等は必要ありません。

遺言執行者としても司法書士に依頼しておくと、不動産の相続登記をすぐに開始できます。

行政書士に依頼する場合

行政書士は依頼された書類の作成がおもな業務で、遺言作成も本来的な業務のひとつです。戸籍から相続関係を読み解いたり必要な書類の準備には慣れているといえるでしょう。

相続人が誰かわからず、誰に何を遺すかなど遺言の方向性が決まらない、というような場合は、まず行政書士に相談してみるといいでしょう。

弁護士に依頼する場合

遺産分割などについて代理人として相続者間の交渉や協議を行うことのできるのは、3つの専門職のうち弁護士だけで、司法書士や行政書士では法律相談業務を行うことはできません。

家族関係が複雑で相続に関して争うおそれがある場合や、相続人以外に遺贈したい場合などは、遺言執行者も併せて弁護士に依頼するのがよいでしょう。

公正証書遺言の手続きの流れ

①遺言者が亡くなり遺言書(正本または謄本)が見つかる

公正証書遺言を作成したことを伝えられていたものの、正本も謄本も見つからない場合は

公証役場に依頼し、遺言検索システムで遺言の有無を確認したり、謄本の交付を受けることができます。このデータ照会の依頼と交付請求ができるのは、相続人、受遺者等に限られています。

*遺言者の生存中は照会や謄本の請求等は本人以外は行えません。

 

②遺言執行者が相続人に遺言の存在を連絡する

遺言執行者は全ての相続人と受遺者に遺言書があることと、自身が遺言執行者に就いたことも伝えます。遺言執行者がいない場合は相続人がこうした連絡手続きや遺言の執行を全員で行うことになります。

 

③相続の対象になる財産をリストアップする

財産の目録を作り、負債についても抵当権の記載や、クレジットカードの利用明細・請求書などから調べてまとめます。

 

④遺言が執行される

遺言書に書かれた内容を実行します。すべての手続きが完了したら報告書を作り相続人と受遺者に通知します。

 

自筆証書遺言や秘密証書遺言との違い
検認が必要な自筆証書遺言や秘密証書遺言では、遺言の執行までに1か月~1か月半ほどの期間が必要になり、検認をしなかった場合は登記の変更や預貯金の解約なども行えません。開封後、遺言に不備があれば無効になることもあります。検認が要らない公正証書遺言ではそのようなリスクがなく、すぐに執行を開始することができます。また遺言書には有効期限はありません。

公正証書遺言の費用

公証人に支払う費用

財産の価額により公正証書遺言の作成手数料は変わります。この手数料に、正本・謄本の費用として枚数×250円、証書原本がA4版4枚を超える場合は1枚当たり250円が加算されます。

また、公証役場以外の場所で作成する場合は手数料の50%が加算され、公証人の出張料が一日あたり2万円(4時間以内だと1万円)と実費交通費がかかります。

専門家に手続きを依頼する場合の費用

司法書士、行政書士

司法書士、行政書士へ依頼した場合の費用相場は大きな違いはなく、それぞれ7万円から10万円ほどで、中には5万円というところも見受けられました。

金額の算定方法は事務所によって差があり、財産の価額によって決めているところもあれば、一律の料金の場合もあります。

その他、不動産の登記簿謄本(1通500円)や戸籍謄本(1通450円)など、必要書類の交付料実費がかかり、それらの取り寄せの手数料も1通あたり500円から1000円と差があります。

弁護士

弁護士に依頼する場合、公正証書遺言の作成がおおむね20万から300万円のようですが、資産の価額により料金を設定しているところもあり、他に交通費や書類の取り寄せ費用等、実費がかかります。

遺言の執行も依頼すると作成と同額程度が加算されるようです。

行政書士・司法書士に比べ費用が高くなるので、一度相談して費用や内容を確認してみるのがおすすめです。相談料は無料から5千円ほどが一般的です。

証人に支払う日当

自身で証人を見つけ依頼する場合には費用に決まりはありませんが、行政書士や司法書士・弁護士などに依頼する場合は一人当たり1~2万円というところが多いようです。

公正証書遺言の手数料

公正証書遺言の手数料は、次の表に示されている基準で算定されています。

目的財産の価額 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円
1億円を越え
3億円まで
5000万円ごとに
13000円加算
3億円を越え
10億円まで
5000万円ごとに
11000円加算
10億円を超え 5000万円ごとに
8000円加算

相続人または受遺者ごとに受ける財産の価額を算出し、この表に基づいてそれぞれの手数料額が算定されます。それらを合算した金額を手数料として公証役場に支払うことになります。

全体の財産が1億円以下の時は、この手数料に遺言加算1万1千円が加えられます。

計算式例
妻の相続分が「預金と不動産合わせて3000万円の価額」長男の相続分が「預金1000万円」の場合
妻の相続分手数料23000円+長男の相続分手数料17000円+遺言加算11000円=手数料51000円

*この手数料を含んだ公証人への支払い費用と、証人の日当はともに遺言作成後にその場で精算します。

公正証書遺言を依頼する時の注意点

原案の内容について

原案では、相続税や贈与税を考えた財産の配分や、相続人同士で納得できる分割案かどうかなど、相続時に起こる可能性のある問題を先取りして、分割内容を考えたり記載すべきことがあるのですが、公証人は基本的に遺言者の申述通りの遺言を作成するのが仕事なので、内容についての助言や配慮はほとんど望めないと考えたほうが良いでしょう。

内容については、あらかじめ専門家に相談したほうが、それぞれの状況に応じて最適な遺言書を作成することができます。

内容の秘密保持

公正証書遺言の作成では、公証人と証人が遺言内容を知ることになります。

公証人には守秘義務がありますが、一般の人が証人だった場合は守秘義務が無く、信頼できる相手に頼んでも万一ということもあります。

費用は掛かりますが、守秘義務のある弁護士など専門家に証人を依頼するのが秘密保持には確実な方法です。

遺言執行者を決めておくこと

遺言執行者を決めることは任意なのですが、後々の手続きを滞りなく行うためにも選出しておくのが良いでしょう。

弁護士や司法書士に依頼する場合は、個人名ではなく事務所などの法人を遺言執行者に指定しておくと、仮に担当者が亡くなった場合も遺言執行者を引き継いでもらえます。

おわりに

 万一の時、残された家族にとって財産をどのように配分するかは、非常に大事でまたデリケートな問題でもあり、資産家でなく一般の家庭でも相続の問題は起こるものなのですが、遺言書があれば無用な争いを起こさずに済みます。

大事な家族に負担をかけつらい思いをさせないためにも遺言を遺すことは大切で、なかでも遺言の執行をすぐに行える公正証書遺言があれば、より家族の不安や負担は軽減されるでしょう。

終活を考えている方は、公正証書遺言について一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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