遺言書を自分で書く場合、どうやって書けばいいのかな?
このように
- 遺言書について詳しく知りたい
- 遺言書の種類が知りたい
- 遺言書の正しい書き方知りたい
など上記の方々はこの記事を読むことで解決できます。
この記事では、遺言書とは?遺言書の種類、自筆証書遺言書とは、自筆証書遺言書の要件、自筆証書遺言書とはの正しい書き方、遺言書の必要性、遺言書の手続き方法、兼任申し立ての弁護士・司法書士の費用を比較、などについてわかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
遺言書とは
自分の意思を書き示した文書
自分の死後のために家族や知人に遺すメッセージのことを「遺言(ゆいごん)」といいますが「遺言書(ゆいごんしょ)」とは特に死後の資産の分配などについて、自分の意思を書き示した文書のことです。
法律用語では「いごん」と読まれることが多く、民法で定められている規定や形式に沿って作成され法的な効力があるものです。
遺言は本人以外が書き換えてはいけない
この遺言制度は、自分の財産をどのように処分するかという自由意思が、本人の生前だけではなく死後も尊重されるという「遺言自由の原則」に基づいています。
これを本人以外が勝手に書き換えたり偽造すると私文書偽造、破棄した場合は私用文書等毀棄罪などの罪に問われ処罰されます。また相続欠格となり相続できる資格を失います。
遺言書の種類
遺言書の種類には「普通方式遺言」と「特別方式遺言」があります。
「普通方式遺言」とは
文書として作成する一般的な遺言で、本人または公証人が作成します。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあり、それぞれに長所と短所があります。
自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
「特別方式遺言」とは
普通方式遺言を作成することが不可能な状態の時に用いられる方式の遺言で、作成後に普通方式遺言が可能になり半年間生存した場合、以降この遺言は無効となります。
「危急時遺言」と「隔絶地遺言」の2つに分けられます。
危急時遺言
- 一般危急時遺言
病気やケガで命の危険が迫っている場合の遺言で、3名の証人が必要。
うち1名が遺言を聞き取り筆記したものを遺言者と証人全員で確認し署名・押印する。
20日以内に家庭裁判所に確認を行ってもらわなければ無効となる。 - 難船危急時遺言
船舶や飛行機に乗っている際に命の危機が迫った場合の遺言で2名の証人と家庭裁判所での確認が必要。
隔絶地遺言
- 一般隔絶地遺言
伝染病により行政処分で隔離されている、被災している、刑務所に服役しているなど、交通ができない隔絶地にいる場合の遺言方式。
警察官1名と証人1名の立ち会いが必要。 - 船舶隔絶地遺言
船舶に乗船中で陸地から離れている場合の遺言方式。
船長または事務員と証人1名が必要
*隔絶地遺言はいずれも、家庭裁判所で確認してもらう必要はありません。
自筆証書遺言とは
本人の自筆のみで作成する遺言書
「自筆証書遺言」は本人の自筆のみで作成する遺言書で、手数料がかからず証人をたてる必要もないので、一般的にいちばん多い方式の遺言です。
パソコンやワープロ使用は認められず、必ず氏名と日付も自署して押印することが規定されています。
遺言に記載する内容はおもに、財産の相続人の指定または排除や取り消しに関すること、財産の分割方法について、子どもの認知、未成年後見人の指定、祭祀主宰者(墓地や仏壇の所有権を持ち管理する人)の指定、遺言執行者の指定などです。
満15歳以上から遺言が可能
遺言をすることができるのは満15歳以上の人で、成年被後見人の場合は2名以上の医師立ち会いのもとで正常な判断能力があると確認される必要があります。
遺言書を保管している人は、遺言者が亡くなった後、速やかに家庭裁判所に遺言書を提出し、検認を受けなければなりません。
自筆証書遺言の5つの要件
自筆証書遺言を作成するには5つのポイントがあります。
1.全文を自筆で記載する
全ての文を自筆で記載することが自筆証書遺言の一番のポイントです。
特に注意しなければいけないのが、本文を自筆で書いたものの、財産の目録をパソコンなどで作成してしまうこと。記載事項が多数あって面倒な場合でも、必ずすべて自筆で書きましょう。紙や筆記具は指定されていませんが、消すことのできる鉛筆などは避け、便箋やコピー紙など、書かれた文字が読みやすい白い紙に、ペンや万年筆を用いるのが一般的です。
また、推定相続人に対する財産の分配については、誰に何を何割相続させるか具体的に記載します。曖昧な表現では無効になるので割合まではっきり書くようにします。
2.作成日を正しく記載する
「〇月吉日」という書き方では日付の特定ができないため遺言が無効となってしまいます。遺言を書いた年月日を正しく自筆で記載し、日付のスタンプ等は使用してはいけません。
3.氏名を入れる
名前は必ず遺言者本人の氏名のみを書きます。
ひとつの証書に夫婦などが共同で遺言することは民法の規定で禁止されていて、連名で署名した場合は遺言書そのものが無効になります。
4.必ず押印する
拇印や指印で認められる例もありますが、本人のものか判断できないこともありますので、印鑑で押印します。この場合は実印に限らず、認印でも有効です。
5.訂正しない
書き加えたり訂正をする場合、第三者ではなく本人がその箇所を指定し変更したことを示すために、加除訂正の方法が厳しく規定されています。その決まり通りに行わなければ訂正部分は無効になります。
そのため、書き間違いや書き漏れがある場合は、面倒でもそのページの全文を書き直すのが確実です。
自筆証書遺言の正しい書き方と封印封筒
用意するもの
- 遺言書を書く紙
- 下書き用の紙
- 封筒
- 万年筆やペン
- 印鑑
自筆証書遺言を書く前の準備
資産の確認
登記事項証明書や通帳などを用意し内容を確認しながら、保有している不動産、預貯金などについて正確に書き出してみます。
推定相続人を確認
推定相続人とは相続人の資格がある人のうち、その順位が高い人のことで、法的な婚姻関係にある配偶者にまずその資格があり、次に子ども、親など最も近い血縁者と続きます。簡単な家系図を書いて確認してみましょう。
資産の配分を決める
誰に何をどれだけ相続させたいか決めます。
通常、遺言が何もなかった場合は民法の「法定相続分」に従って相続分が決められますが、肉親以外で特に残したい人を指定し相続させることもできます。
遺言書で指定された内容は「指定相続分」といって法定相続分よりも優先されますが同時に、相続人には一定割合の相続分(遺留分)が留保されます。
自筆証書遺言の正しい書き方
整理した内容に沿って下書きをしてから清書をします。
一番上に「遺言書」次に「私○○○○は、次の通り遺言する」と書き、内容を順に記載していきます。
預貯金について
銀行名、支店名、口座の種類、口座番号を指定し、妻や子供など推定相続人に対して「相続させる」と記載します。
それ以外のお世話になった知人や友人などに受け取らせたい場合は「遺贈する」とします。
預貯金の例文
友人である田中一郎(昭和○○年○○月○○日生まれ)に遺贈する
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号01234567
不動産について
該当する不動産について登記事項証明書の記載事項を正しく書き、誰に相続させるかを指定します。
その他の資産について
他にも資産があった場合に備えて「その他の資産は全て**に相続させる」などの一文を入れると安心です。
遺言執行者について
確実に遺言を実行してもらえるよう、可能であれば遺言執行者を選任しておきます。
特に内縁関係の人や友人など、相続人以外の人に財産を残したい場合は、遺言の発見者に紛失・破棄されて遺言を無かったことにされるリスクもありますので、弁護士・司法書士など専門家に遺言の執行と合わせて保管も依頼しましょう。
遺言書見本
遺言書 私、山田太郎は次の通り遺言する 一.私は下記の財産を妻・山田花子(昭和○○年1月1日生まれ)に相続させる。 1.土地 所在:東京都世田谷区++2丁目 2.自宅 所在:東京都世田谷区++2丁目 二.私は次の定期預金を長男である山田一郎(平成○○年1月31日生まれ)に相続させる ++銀行 △△支店 定期預金 口座番号12345678 三.私は遺言執行者として下記の者を指定する 氏名:鈴木次郎
平成○○年1月1日 |
遺言書を書き終えたら封筒に入れます。乾くと剥がれやすい粘着力の弱いノリや、テープは使わず、確実に封をした上に必ず捺印をします。
封筒の表書きには「遺言書」、裏には記載年月日を書いて署名し、自宅で保管する場合は「開封せず家庭裁判所で検認をうけること」など、勝手に開封されないよう一筆書いておきます。
自筆証書遺言の簡単な書き方
遺言書作成キットを利用する
より簡単・確実に自筆証書遺言を作成するには「遺言書作成キット」があります。
用紙と封筒のみのセットで500円ほど、正しい書き方を解説したテキストや見本、保管用の台紙までセットになったものも1500円から3000円ほどで購入できます。
複写防止のためにコピーできない用紙が使われていたり、項目ごとに枠が書かれていて書きやすいものや、自分らしい色やデザインが選べるなど、いろいろな工夫がされたキットが各種販売されています。
遺言書の検認の必要性
検認とは、家庭裁判所において遺言書の内容等を確認し、相続人らに遺言の存在と内容を周知させ、その後の改ざんや偽造を防止するためのものです。
遺言書のうち公正証書遺言を除く、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言書を家庭裁判所に提出し検認を請求しなければなりません。
封印がしてある遺言書の場合は、発見時に開封することはできず、この検認の際に相続人または代理人が立ち合って開封することになります。
検認を請求する人
遺言の発見者(相続人)または遺言管理者が申立人となり請求します。
検認の請求先
遺言者の最終居住住所を管轄する家庭裁判所に検認を請求します。
参考 裁判所の管轄区域
検認の請求期間
検認の請求期限は「遺言者の死亡と遺言の存在を知ったら速やかに」とあるものの、特に日数等は明記されていません。
しかし、検認後手続きが完了するまで1ヶ月~1ヶ月半ほどかかるので、生活の不都合が生じないよう、できるだけ早く準備をし請求するのが良いでしょう。
検認をしなかった場合
検認の請求を怠ったり、検認をせずに遺言書を開封してしまった場合、検認を経ずに遺言を執行した場合は5万円以下の過料が課せられる可能性があります。
(開封されても遺言の効力はあり、開封した人も相続の資格を失うことはありません)
また、この検認手続きを経ないと銀行口座の名義変更、不動産の相続登記、自動車の登録などができません。
検認の注意点
検認は遺言内容の有効や無効を判断するものではありません。
明らかに要件を満たしていない遺言書は無効になりますが、それ以外の点で有効・無効を相続人のあいだで争う場合は、裁判などで専門家に判断をゆだねましょう。
遺言書の検認に必要な書類
遺言書(封がしてあるものはそのまま封書で)のほか、遺言書1通につき収入印紙800円分の費用と、郵送連絡用の切手代がかかります。
必要な書類は、相続人が誰かによって多少の違いがあります。
共通する必要書類(1~3)
1.検認申立書
検認の申立書は裁判所HPまたは各都道府県の家庭裁判所のHPにて書式ワード(word)などでダウンロードが可能です。
参考 各都道府県の家庭裁判所一覧
参考 裁判所HP 遺言の検認について
参考 家事審判申立書(用紙ダウンロード:PDF)
参考 家事審判申立書(記入例:PDF)
参考 当事者目録(PDF)
2.遺言者の出生から亡くなるまでの全ての戸籍謄本(戸籍等の全部事項証明書)
3・遺言者の子供ですでに死亡している人がいる場合、その人の出生から亡くなるまでの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
相続人が遺言者の配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)である第二順位相続人の場合
1.直系尊属ですでに死亡している人がいる場合、その人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
相続人が不存在の場合、または遺言者の配偶者のみ、または遺言者の配偶者と遺言者の兄弟姉妹および甥・姪(第三順位相続人)の場合
1.遺言者の父母の出生から亡くなるまでの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
2.遺言者の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
3.遺言者の兄弟姉妹ですでに死亡している人がいる場合は、その人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
4.代襲者としての甥・姪ですでに死亡している人がいる場合は、その人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
遺言書の検認申し立ての手続き方法
検認申し立て手続きの流れは以下の通りです。
1.申し立てをする
管轄の家庭裁判所に、遺言書検認申立書と必要書類を用意して検認の申し立てをします。
2.検認期日の連絡を受ける
申し立て後、おおむね1ヶ月以内には検認期日が決定され、家庭裁判所から連絡がきます。
3.検認が行われる
期日に家庭裁判所において、相続人が立ち合いのもと遺言書の検認が行われます。
遺言書の内容や形状、加除訂正について、使用した筆記具なども調査し、裁判所の書記官が検認調書を作成します。
立ち会う相続人は全員である必要はありません。
4.遺言書が返却される
検認が終了すると、遺言書に検認済み証明書が付けられ返却されます。遺言書の検認が完了すると、預金や不動産等の名義変更が可能となります。
また遺言書で遺言執行者が指定されていなかった場合、検認後に執行者の選任を裁判所に申し立てることができます。
申し立てができるのは「利害関係人」で、相続人、受遺者(遺産の贈与を受ける人)、遺言者の債権者などです。
検認申し立ての弁護士・司法書士の費用を比較
検認の申し立てを自分で行うのが不安な場合や時間的な余裕もない場合は、専門家に依頼することもできます。
司法書士に依頼する場合の検認費用は、現在は司法書士報酬規定が廃止され、各事務所によって自由に設定されていることから、3万円程~7万5千円と幅があります。
弁護士に依頼する場合は司法書士よりも高くなり10万円が相場とされていますが、こちらも各事務所によって料金が違い、安いところでは5万円からという事務所も見られました。
司法書士 | 弁護士 | |
報酬 | 3万円~7万5千円 | 5万円~10万円 |
実費 | 戸籍謄本など必要書類の交付料、郵送料、交通費など | |
その他 | 必要書類の取り寄せ手数料 |
「不動産の名義変更」と「相続の協議」で依頼を分ける
司法書士と弁護士では費用のほかに、相続に関する仕事の内容でも異なる点があります。
特に不動産の名義変更は司法書士にはできますが弁護士に依頼することはできません。
また、相続に関する協議では弁護士は司法書士と異なり、代理人となって協議や交渉を行うことができます。
不動産の名義変更 | 相続の協議 |
・司法書士に依頼する | ・弁護士に依頼する |
そのため、不動産の名義変更の必要があると思われる場合は検認も司法書士に、また相続に関して争う可能性のある場合は弁護士に依頼しておくと、その後の手続きを依頼する際にスムーズでしょう。
おわりに
「遺言書」というと、莫大な資産がある人だけが準備するもののようなイメージがありますが、一般の家庭でも相続に関して争いが起こることは、そう珍しいことではありません。
自分の死後に家族を相続で悩ませることなく、安心して平和な生活を送らせるためにも、遺言を残しておくことは大切なことですし、家族への愛情表現にもなります。
この機会にぜひ一度、遺言書について考えてみてはいかがでしょうか。